2015 Fiscal Year Research-status Report
初期近代における原子論の受容と科学言説とユートピア言説の変容に関する学際的研究
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15K02291
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
川田 潤 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70323186)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ユートピア / 原子論 / 科学言説 / 主体と共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、原子論の基礎的資料の蒐集・整理を行い、それに基づく、科学言説に関する資料の蒐集・整理、そして、これまでのユートピア研究に基づく理論的基盤の見直を行った。具体的には、主に以下の2点から研究を行った。 (1) 原子論に関する資料蒐集・理論基盤の整序: 初期近代以前の資料(ギリシア、ローマの原子論)、ルクレティウスのテクストの初期近代英国におけるテクスト、ガッサンディによる原子論の英国への紹介などの蒐集を行った。また、現代における原子論の理論的重要性を確認した。更に、原子論を取り巻く言説の理論整理のため、原子論と主体論、科学言説論、ユートピア論との関係を考察した。具体的には、マテリアリズムとしての原子論と人間の肉体と精神の関係について、原子論と十七世紀初頭の王立協会内の受容のあり方、そして、原子論と共和主義との関係についての、基礎的枠組みを確認した。 (2) 初期近代ユートピアと科学言説に関する資料蒐集・理論基盤の整序: ユートピア・科学言説の関係性を再考するため、科学言説と初期近代のユートピア言説のテクストの蒐集を行うとともに、両者の関係性を扱う2次資料を調査・蒐集し、分析のための理論的基盤を構築した。具体的には、フライシス・ベイコンの科学立国主義の十七世紀後半から十八世紀前半における具体化についてと、「空想」科学と理想国家との文学における結びつきの可能性について、理論的な整備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画通りに理論レベルと一次資料レベルの資料蒐集とその概要の把握を行うことができた。 とりわけ、現代において、原子論を重視することの理論的意義を検討することができたことと、一次資料において、これまで射程に入っていなかった範囲のテクストを認識、一部、蒐集することができた。 外部識者との公式の意見交換はできなかったが、資料蒐集の場などにおいて、非公式に情報提供などを受けることで補うとともに、他分野の論文、資料の蒐集によって補った。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究がおおむね予定通りに進んだため、今後は予定通り、不足する資料の蒐集を続けるとともに、具体的なテクスト分析を行う予定である。その際、科学言説との関係での分析を先行して行い、その後、ユートピア言説との関係での分析を行う予定である。 前年度に公式に行うことができなかった、外部識者との意見交流の機会を、中間成果報告などと合わせて、設定する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度に計画していた、本研究課題に関する、謝金が生じるかたちの正式な専門知識の提供の依頼ができなかったため、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度行うことができなかった点を含め、外部との意見交換の機会を設定する。その他は計画通りに使用する。
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Research Products
(2 results)