2015 Fiscal Year Research-status Report
古英語期の聖人伝における女性像―Aelfricの言語とテクストの基礎的研究
Project/Area Number |
15K02313
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
島崎 里子 昭和女子大学, 文学研究科, 准教授 (90276618)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 古英語 / 女性 / Aelfric / married saints / 写本 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である平成27年度は、課題研究の基盤整備を中心に行った。Aelfricのvirgin spouses作品群(Julian and Basilissa, Cecilia and Varelian, Chrythansus and Daria)について、既存の刊本を網羅的に収集・整理すると共に、次年度以降の作業のベースとなるテクストの確定作業を行った。 既存の刊本のほとんどが、編者によってmodernizeされたり、必要に応じて改変されたcritical editionであることから、本研究課題では、作者の意図のみならず、作品構成や使用語彙の異同を写本ごとに精査するという目的にかなう、原写本に忠実なdiplomatic editionの新たな作成に取り組んでいる。 テクスト作成にあたっては、British Library(London)の協力を受け、既存のテクスト(Skeat(1891-1900)およびUpchurch(2007))と原写本(MS Cotton Julius E. Vii)との厳密な照合作業を行いつつ、句読点や写字生による修正などの写本情報も全て取り入れている。テクストを電子化したことで、検索作業が可能となり、今後、文学研究だけでなく、言語としての英語・英語史研究にも寄与することが期待できる。 ここで新たに作成したテクストおよび既存のテクストとの異同については、論文「Aelfricのmarried saints作品群をめぐって--Diplomatic Texts of Aelfric's Lives of Married Saints, Trial Version--」として、『昭和女子大学女性文化研究所紀要』第43号、1-25(2016)に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた今後の研究の基盤となるAelfricのmarried saints作品群の新たなテクスト編纂をおおむね完了し、traial versionとして大学紀要に掲載すると共に、機関リポジトリーを通じて学外へ公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
Aelfricがmarried saints作品群を執筆する際に参照したとされるラテン語原典、Aldhelmおよび作者不詳の古英語聖人伝について、前年度に行ったのと同様の方法で、それぞれ電子テクストを作成し、作品ごとに比較対象分析を可能にする新たなテクストの編纂を行う。既刊の刊本、論文等の資料収集も継続して行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度に予定していた英国図書館での写本調査3件のうち、2件を予定通りに実施したが、作業の進展状況等を鑑み、1件を次年度に繰り越すこととしたため。調査作業の過程で生じた追加の調査課題についても、次年度に併せて行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に、前年度から繰り越した英国図書館での写本調査を行うと共に、日本では入手困難な文献資料等を現地にて入手する予定である。
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Research Products
(1 results)