2017 Fiscal Year Research-status Report
『ロビンソン・クルーソー』の再話に関する比較文学的研究
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15K02321
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 和哉 日本女子大学, 文学部, 教授 (00235326)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 翻訳児童文学 / イギリス児童文学 / 翻案 / 受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年の研究は、『ロビンソン・クルーソー』(以下、『ロビンソン』)の日本における受容、とくに児童文学作品としての受容に重点を置いた。申請者が注目している南洋一郎という翻案者は、第二次大戦以前より大日本雄弁会講談社(現・講談社)発行の少年向け雑誌『少年倶楽部』に創作や翻案を発表していたが、昭和13年に『ロビンソン漂流記』として本作の翻案を同社より刊行する。申請者はこの翻案作品の表現上の特色やイデオロギー的要素についてはすでに研究したことがあるので、今年度は、この作品を『少年倶楽部』に発表された他の作家による作品と比較するために、同誌に発表された作品を広く渉猟した。 その結果、南の翻案が、昭和初期の少年雑誌の言説空間から強く影響を受けており、立身出世・ナショナリズム・忠孝などのイデオロギーが原作とは無関係に取り込まれている一方、少年と動物の心情的な結びつきを強調するなど、当時の日本における幼少読者に親しみやすくする技巧なども共有されていることが明らかになった。 その一方、江戸末期以来、日本における『ロビンソン』の翻訳・翻案は200を越えるが、その約三分の二は戦後に刊行され、その大部分は児童向けになっていることから、戦後日本の翻訳児童文学の受容というコンテクストにおいてこの作品を捉える必要がある。そのため、本年度発表された研究成果は、日本におけるイギリス児童文学の受容に関するものが主になった。これらの研究においては、戦後日本においてイギリス児童文学がどのように受けとめられてきたかと照らし合わせながら、『ロビンソン』の受容について考えることを試みた。その結果、例えば、一見したところ無関係のようにも思われる、A・A・ミルン作の『くまのプーさん』(石井桃子訳)などにも、作中に登場するごっこ遊びの「冒険」や「孤島」という形で『ロビンソン』の影響が見られることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の申請後、勤務先の大学において学科長を務めることとなったことに加え、日本英文学会という、会員数が3,000人を越える全国学会の事務局に入局することとなり、学会誌発行や大会準備の事務に追われるようになったため、そのほかの研究も含め研究そのものに費やせる時間が激減した。 計画していた研究発表の応募を取りやめたり、執筆を完了する予定であった論考が完成していないなど、成果のアウトプットの点で計画より遅れているが、資料の読解・分析についてはほぼ計画どおりではないかと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、申請者がとくに注目している、南洋一郎の翻案作品が戦後の『ロビンソン』受容に与えた影響について、英語論文を執筆中である。これは、2014年に申請者が口頭発表した"I must endure courageously and manfully": Minami Yoichiro's Translation of Robinson Crusoe in Post-War Japan に対して大幅に加筆したうえで、イギリスで刊行される論文集に掲載される予定である。 それと並んで、イギリスと日本のあいだにアメリカという中間項を置き、1950年代アメリカにおける『ロビンソン』受容を考えることで、この作品の変容の一形態を捉えようとする計画も進行中である。具体的には、アメリカのミステリ・SF・ホラー作家のフレドリック・ブラウンの短篇のモティーフと『ロビンソン』の関連について論じることを構想中である。
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Causes of Carryover |
学務・学会業務により研究時間が充分確保できなかったことにより、必要な図書の購入・研究発表のための出張ができなかった。 その分の図書購入・学会出張(国内)のために用いる予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Book] 教室の英文学2017
Author(s)
日本英文学会(関東支部)
Total Pages
334
Publisher
研究社
ISBN
9784327472351