2018 Fiscal Year Annual Research Report
Re-Imagining the Paradigm of African American Literature: Intergenerational Dialogues on Cultural Identity in the Post-Civil Rights Era
Project/Area Number |
15K02348
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
西本 あづさ 青山学院大学, 文学部, 教授 (40316881)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ポスト公民権運動時代 / アフリカ系アメリカ文学・文化のパラダイム / 多文化主義 / トニ・モリスン / ポストソウル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公民権運動後、エスニック・リバイバルと多文化主義の下で1980年代までに構築されたアフリカ系アメリカ文学・文化の枠組みが、アフリカ系の集団内部で拡大した格差や多様性、合衆国内の文化戦争、グローバル化と消費文化の浸透等を背景に、80年代末~90年代に内外から揺さぶられる状況を、新たな文学・文化、ひいては共同体の構築を模索する動きとして、主に二つの観点から分析してきた。 第一は、1970年以来アフリカ系アメリカ文学・文化を牽引するトニ・モリスンの文学と時代の相関関係の検証である。マニュスクリプト調査の成果も踏まえ、80~90年代のモリスン中期の展開を分析し、ポスト公民権運動時代の急激な変化と新世代の出現に民族のアイデンティティの危機を見た作家が、奴隷制以来のアフリカ系の歴史・文化の再発見/再構築を通じて、民族の過去と未来を接続する文学世界の創造を模索した過程を跡づけた。 第二は、公民権法制定後の時代に育ったポストソウル世代とモリスン世代の間の、民族文化とアイデンティティの枠組みをめぐる破壊力と創造力に満ちた対話関係の検証である。研究に当り、トマス・アレン・ハリス氏、ダンジー・セナ氏、ダフニ・ブルックス氏ら多くのポストソウル世代のアーチストや研究者から貴重な証言を得た。 成果には、平成27年度に共訳書1本、ポストソウルのアーチスト2名の招聘・講演会開催、同28年度にカリフォルニア大学での招待講演1本と共著書1本、同29年度に日本アメリカ文学会東京支部での招待研究発表1本、最終年の同30年度は、モリスンが『タール・ベイビー』(1981)で描いたポスト公民権運動時代の黒人女性像がいかに若い世代に修正されていくかを論じた黒人研究学会での研究発表1本と学術論文1本がある。 今後は、同じ問題意識の下でさらにモリスンのマニュスクリプト調査を進め、研究の射程を21世紀にまで拡げたい。
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Research Products
(2 results)