2019 Fiscal Year Annual Research Report
The seventeenth century readers' marginalia: How they read/used Shakespearean Folios
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15K02359
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
住本 規子 明星大学, 人文学部, 教授 (10247174)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シェイクスピア / フォリオ / 読者 / 書物 / 書き込み / 初期近代 / マテリアル・テクスト研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、シェイクスピア・フォリオの書き込みに見られる17世紀の読書スタイルを、フォリオ本の閲覧調査を行い書き込みのあるページ画像を採取・収集して得られた実証的データを、初期近代を書物史、読書史、とりわけ、マテリアル・テクスト研究といった分野からリサーチによって得られた最新の知見を参照しながら分析することで、解明しようとしてきました。 最終年度には、フォルジャー・シェイクスピア図書館でファースト・フォリオ6冊、セカンド14冊、サード3冊、フォース5冊を、アメリカ議会図書館でファースト2冊と後の各フォリオ1冊ずつの閲覧調査を実施し画像データを収集しました。本課題では書き込まれた言葉だけでなく、下線、星印、マニキュール等のマーキングにも注目してきましたが、これまで報告されたことのないマーキングが見つかったこと、マテリアル・テクスト研究で注目されはじめたファミリー・コピー(家族代々に受け継がれてきたフォリオ)をハッチンソン家のフォリオ(フォルジャーF1-54)など、少なくとも2冊、新たに調査することができたこと、の2点が特に重要な成果として挙げられます。 期間全体を通じての研究成果としては、マーキングのほとんどは、再利用したい台詞の場所を覚えておくための目印と解釈するのが妥当であること、作品全体を集中して読んでいる例(明星コピーやケアリ家のファースト・フォリオなどはその顕著な例)より、たまたまみつけたテクストに印をつけているという拾い読みの例の方が多いこと、家庭の中心に置かれて人生を考える際のヒントを求めて拾い読みをする辞/事典としての役割をシェイクスピア・フォリオが担っていた可能性が見えてきたことがあります。シェイクスピア受容史ならびにマテリアル・テクスト研究への貢献と評価できると考えます。成果発表は、2020年度に決定している招待発表その他の場を予定しています。
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Research Products
(1 results)