2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02373
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Research Institution | Nagano Prefectural College |
Principal Investigator |
高梨 良夫 長野県短期大学, その他部局等, 教授 (50163225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 正規 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00219213)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エマソン / アメリカ超越主義 / 鈴木大拙 / 禅仏教 / 環太平洋 / 日米現代詩 / 吉増剛造 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者高梨は、エマソンの思想をグローバルな視点から考察する研究の継続として、エマソンの超越主義思想と鈴木大拙の禅思想の比較的考察、明治・大正期のエマソンの受容の研究を中心に実施した。5月にはアメリカ文学会(サンフランシスコ)で口頭発表“Emerson and Daisetsu Suzuki”をし、内容を論文にまとめた。また論文「エマソンと禅仏教―『臨済録』を中心とする比較的考察」を執筆した。論文“The Reception of Emerson and Thoreau in Meiji and Taisho Japan”は Oxford Research Encyclopedia of Literature に掲載した。さらに『エマソン詩選』(未来社)の書評を『図書新聞』に掲載し、またキリスト教神秘主義思想研究会に出席し、エマソンをキリスト教神秘主義の流れに位置付けようとした。 研究分担者堀内正規は、アメリカの詩人フォレスト・ガンダーと日本の詩人吉増剛造についてテキスト(詩)を書いてもらう課題に当たって、2月初旬にプロヴィデンスでガンダーと直接会いエマソンのことを話し合い、7月上旬の吉増の英訳詩集刊行に合わせて来日したおり、国立近代美術館のイベントと立命館大学のシンポに出席して学術的交流をした。(2日には吉増宅のホームパーティで亡くなられたガンダーのパートナーの詩人 C. D.ライトをともに偲んだ。)『現代詩手帖』7月号に吉増論を執筆。12月には早稲田大学で英訳詩集の訳者の一人ジョーダン・スミスと吉増本人に講演してもらった。本年3月、本研究課題のために論文「あたらしいエマソン――吉増剛造からエマソンへ」を出す。4月ガンダーより、エマソンの日記から言葉を選んだ詩“Epitaph”(「墓碑銘」)が届いた。この間ずっと単著『エマソン 自己から世界へ』の校正作業を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高梨は当初の計画に従い、5月には米国アメリカ文学会で口頭発表“Emerson and Daisetsu Suzuki”を行い、またエマソンに関する3篇の論文を執筆し、2篇の論文「エマソンと禅仏教―『臨済録』を中心とする比較的考察」と“The Reception of Emerson and Thoreau in Meiji and Taisho Japan”(Oxford Research Encyclopedia of Literature)については、研究成果として公表することが出来た。さらに9月には『エマソン詩選』の書評を『図書新聞』に掲載し、日本におけるエマソン再評価の一環であることを指摘した。また12月には招待講演「エマソン、東洋、日本」を行った。 堀内にとってこの一年は、詩人フォレスト・ガンダーとこれ以上なく深い精神的交流を持つことができた年であった。2月、最愛の詩人である妻 C. D.ライトを喪ったばかりのときにアメリカで会い、エマソンとガンダーのテキストからの抜粋を手渡し、後に「自分が受け取った最も美しいギフト」と言ってもらえたし、7月初旬の来日の折には(飛び入り参加の城西国際大学のシンポも含めて)東京と京都で3度もご一緒でき、さらに4月に入って深い詩のテキストを、エマソンを起点にして執筆していただいた。吉増との交流も継続している。論文としては、世界で初めてエマソンを吉増剛造から読み直す研究を出すことができた。単著としてエマソン論を吉増論と同時に準備しているがこちらも着実に進捗している。またソロー学会の英文論集の編集長の作業も本研究に深く関わっているが、こちらもどうにか本年中に刊行できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
高梨は、エマソンの思想をアメリカと東アジアの間のグローバルな視点から考察する研究を継続する。2017年10月の日本ソロー学会で口頭発表「エマソンとソロー―自然観をめぐって」を行う。またエマソンと大乗仏教との間の比較的考察をし、論文「エマソンの 〈内なる神〉と仏教の〈如来蔵〉」としてまとめ、さらに英語論文にして国際大会での口頭発表、米国の学術雑誌への掲載の可能性をさぐる。さらに“Emerson and Daisetsu Suzuki”を日本ソロー学会から刊行予定の英文論集に掲載する。またエマソンをキリスト教神秘主義思想のなかに位置付ける研究を継続する。 堀内は、詩人フォレスト・ガンダーと吉増剛造にエマソンについてのテキスト(詩)を書いてもらい、私のコメントを付して、印刷物を作る。「吉増剛造からエマソンへ」の考察の続きをおこなう。それとは別にエマソンの現代的な可能性について、「幸福」をキーワードにした共著(金星堂)に夏提出で論文を書く。また本年度中に単著『エマソン 自己から世界へ』(南雲堂)を刊行することになっている。やや遅れて思潮社から『吉増剛造とアメリカ』も刊行できる見込みである。日本ソロー学会の英文論集でも、思想的な側面から見たエマソンの現代的意義についての論文を出す。
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Causes of Carryover |
高梨に残額が出たのは、2017年3月出席予定の研究会を欠席したため。 堀内に多額の残額が出たのは、研究実施報告書に記した課題、すなわち、日米を代表する詩人吉増剛造とフォレスト・ガンダーにエマソンについて詩を書いてもらい、それに私のコメント(解説)と小論を付したチャップブックを本年に出したいと思っているからである。吉増のテキストについては写真版のカラー印刷も想定し、こちらの印刷費に30万円から40万円程度を見積もっているため、予算を翌年に回す決断をした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高梨の残額はわずかのため、図書購入や研究会出席のための旅費として支出する。 堀内は、上記の「残額が生じた理由」に記したとおり、二人の詩人とエマソンをつなぐ小さな出版物を出すために資金を用いたいと考えている。またアメリカに渡航することも考えている。
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Research Products
(9 results)