2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Deconstruction of the "Autobiography" in Jacques Derrida
Project/Area Number |
15K02393
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郷原 佳以 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90529687)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジャック・デリダ / 自伝 / 灰 / ロラン・バルト / エミール・バンヴェニスト / 発話理論 / 読後火中 |
Outline of Annual Research Achievements |
デリダにおける「自伝の脱構築」のありようを明らかにするという本研究の目的に沿って、平成30年度は主として以下の研究を行った。 (1)前年度までの研究成果を引き継ぎ、デリダの著作において「読後火中」を命ずる手紙のテーマを「プラトンのパルマケイアー」、「送る言葉」、『火ここに亡き灰』において辿り、デリダにおいて晩年まで続く「灰」概念の誕生を位置づけると共に、その含意を追求し、 "La memoire et la/la' cendre -- Genealogie de la Deuxieme lettre chez Derrida"として発表した。 (2)デリダが晩年の死刑論において欧米の死刑廃止論におけるキリスト教的論理のような「アリバイ」のない死刑論を探求していることを論じた「ダイモーンを黙らせないために――デリダにおける「アリバイなき」死刑論の探求」を論文として発表した。 (3)デリダは哲学史を踏まえ哲学者として過去の哲学的著作を脱構築するときに、そのテクスト読解および自らのテクスト性において「文学的」となるという仮説のもとに、「デリダの文学的想像力」という連載を開始した。第一回ではこの仮説の論拠を、1)テクストの読みの実践から始まること、2)ある種の文学テクストが哲学的概念装置への抵抗の運動においてモデルとなること、3)現前の形而上学に依拠した発話理論に還元されない言語の探究であること、4)1970年代頃から哲学的言説らしからぬ文体でテクストを著すようになったこと、5)普遍的概念から逃れ去る単独性に照準すること、6)虚構および亡霊性に着目することの六点を挙げた。第二回では、このうちの第三点の検証の第一段階として、構造主義の隆盛の只中において、バルト(「書くは自動詞か?」)とデリダ(「差延」)が、言語学者バンヴェニストが論じた「中動態」をいかなる仕方で援用したのかを明らかにした。
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