2015 Fiscal Year Research-status Report
18・19世紀転換期の身体表象 ― ヘルダー・ゲーテとパーフォーマンス芸術
Project/Area Number |
15K02401
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
武井 隆道 筑波大学, 人文社会系, 教授 (10197254)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 真 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50250999)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ゲーテ / ヘルダー / 身体 / 存在 / 時間 / タブロー・ヴィヴァン / 彫塑 / アチチュード |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は初年度であり、武井、濱田両名の従来の研究の蓄積を再確認しつつ、2016年度に行うドイツでの資料収集や研究者との意見交換の下準備として、以下のような研究を行った。 研究テーマのうち、武井はゲーテの『親和力』における身体表象の分析を行い、かつゲーテ後半生の美的思想との関連を探った。すなわち『親和力』中のアチチュード、タブローヴィヴァンのモチーフを、ゲーテのヴァイマル宮廷における実際の演劇活動と照らし合わせ、ゲーテがどのような発想で現実の演劇活動を作品中のモチーフへと造形して行ったかを、日記等の記録に基づいて探求した。特に身体の時間性とその静止(擬似的死)の表象が、『親和力』後半の中心的テーマであることを明らかにした。 濱田はヘルダーの著作における身体表象と時間性の問題について、ヘルダーの初期から中期にかけての芸術論を手がかりに考察を進めた。ヘルダーの芸術論において視覚・触覚・聴覚についての議論が身体表象および時間性の問題とどのように関わっているのかを、『第四批評論叢』および『彫塑』を中心に探った。 武井は2016年1月23日、ゲーテ自然科学の集い主催シンポジウム「ゲーテ時代の造形芸術論」(立命館大学)において「『親和力』の身体 ― 表象と存在」と題して研究発表を行った。これは『親和力』第2部に描かれているサロン的小演劇アチチュードとタブロー・ヴィヴァンを取り上げ、その『親和力』全体の中での意味を明らかにし、さらにゲーテの他作品やヴァイマル宮廷での芸術活動との関連を探るという内容であった。 濱田は2015年5月16日、日本ヘルダー学会のシンポジウム「日本のヘルダー研究の現在と未来Ⅱ」(立教大学)において、「自著『ヘルダーのビルドゥング思想』についてという題で発表を行った。これはヘルダーの人間形成論を軸にヘルダー思想全般を見通した上で、身体と時間の問題を扱ったものであった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は2016年度に集中して行うドイツ滞在の準備のための研究活動を実施した。諸文献、書籍の購入は順調に進み、研究を深めることができた。 武井はその研究成果を、上記ゲーテ自然科学の集いで発表することができた。 濱田は上記ヘルダー学会での発表とその際の議論、批判を基に更に研究を深化した。 2015年度中のドイツでの活動は、学内業務(委員等)との関係で実現しなかったが,2016年度の実行に向けて十分な準備ができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、当初の予定通り、ドイツ、イギリス、イタリアにおいて、資料収集と研究者との意見交換を行う。 ゲーテのアチチュードおよびタブロー・ヴィヴァン経験の現場であるナポリ、ゲーテとヘルダーともに彫塑論の発想を得たローマ、アチチュードの創始者エマ・ハミルトンの資料が残るロンドン、ドイツにおけるアチチュード、タブロー・ヴィヴァンの上演の場であるヴァイマル、ウィーン、ベルリン等宮廷都市を見学するとともに、ゲーテとヘルダーの居住地ヴァイマルで身体論関係の資料を収集する。 バイロイト大学ムンゲン教授、ベルリン自由大学ブラントシュテッター教授等を訪問、意見交換を行う。 国内では嶋田洋一郎(九州大学教授)、村山久美子(早稲田大学非常勤講師)、森立子(日本女子体育大学准教授)を訪問、あるいは招待し、研究会を開催する。
|
Causes of Carryover |
2015年度は学内委員業務等により、海外研究活動のための時間がとれなかったため、旅費が国内旅費にとどまった。そのため、活動は国内学会の発表、並びに書籍文献購入を中心に行った。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は海外(ドイツ、イギリス、イタリア、オーストリア)を訪問し、研究者との意見交換、資料収集にあたるほか、研究者の日本への招致を予定しているため、それらの旅費に残額を充てることを考えている。
|