2015 Fiscal Year Research-status Report
文学作品における固有名の機能とその受容についての研究―ドイツ語文学の場合
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15K02422
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
前田 佳一 帝京大学, 外国語学部, 助教 (70734911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 潤 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50613098)
江口 大輔 早稲田大学, 法学学術院, 講師 (90626285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 固有名 / 記憶 / 受容 / オーストリア |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年10月に京都府立大学にて行われたシンポジウム『名前の詩学ー文学における固有名あるいは名をめぐる諸問題』の成果を「日本独文学会研究叢書」として出版した。前田は編者を務め,インゲボルク・バッハマンにおける固有名の「アウラ」と記憶の問題を扱う論文を発表した。研究分担者の山本潤(首都大学東京)は中世俗語文芸における固有名と作者性の関連をめぐる論文を発表した。同じく研究分担者の江口大輔(早稲田大学)はジャン・パウルの長編小説における固有名の交換の問題を扱う論文を発表した。研究協力者の木戸繭子はトーマス・マンの短編小説における固有名の「呼びかけ」と主体形成の問題を扱う論文を発表した。 次年度以降に予定される下記の二つのシンポジウムの前準備としての研究会を本年度中にスタートした。 一つは1930年代から50年代までのオーストリア文学において旧ハプスブルク帝国時代にまつわる固有名がいかにして記憶の継承あるいは歪曲のために機能しているかということを問うものであり,2016年10月の開催を予定している。これには前田,山本に加え研究協力者の桂元嗣(武蔵大学)が加わることになっている。前田はそれへの予備調査として9月にウィーン国立図書館への調査旅行を行った。 もう一つは固有名が文学における虚構性の構築にいかにして寄与するのかを問うシンポジウムであり,2017年5月の開催を予定している。前田,江口に加え木戸が加わることになっている。江口はそれへの予備調査として3月にベルリン国立図書館でのジャン・パウル・アーカイブへの調査旅行を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前田が2016年4月に帝京大学からお茶の水女子大学へと移籍するに際して研究環境の変化に伴う準備の遅れが予想されたため第二回のシンポジウム開催時期を当初予定の2016年度中から2017年度に変更することとなったが,むしろこのことによって事前の調査ならびに準備のための研究会に十分に時間を割くことが可能となり,当初予定していた通りの成果を挙げることが可能となる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き上記二つのシンポジウムの準備を進めると共に,最終年度に予定している第三の(固有名と文学をめぐる問題を包括的に扱う)シンポジウムの準備ならびにそれに先立つ調査・各参画研究者の意見交換の機会としての研究会を開始する見込みである。同シンポジウムのパネリストの国内外からの招聘がさしあたっての課題となる。 個別テーマとしては戦後オーストリア文学におけるハイミート・フォン・ドーデラーに代表される大都市文学における固有名による虚構空間の構築と記憶の継承をめぐる問題に取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
前田が所属研究機関を帝京大学からお茶の水女子大学に移すにあたり,移り先機関での研究環境整備のため2年目以降の物品費(文献購入費)を確保する必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前田の所属研究機関における研究環境整備のための物品費(文献購入費)に充当する予定である。
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Research Products
(15 results)