2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02500
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
栗林 均 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (30153381)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | モンゴル語 / 近世モンゴル語 / モンゴル文語 / 清文鑑 / 清朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、モンゴル語が清朝の公用語として用いられた17世紀半ばから20世紀初までをモンゴル語史のなかで「近世モンゴル語」として位置づけ、その成立過程を言語的特徴から明らかにすることを目的としている。研究の資料としては、1)官製辞書、2)官製史書・勅語、3)档案文書の3つのジャンルに分けて研究する計画を立てている。 本年度は、「清文鑑」とよばれる清朝の一連の大型官製辞典に含まれるモンゴル語の研究を進めて、次の2冊の著書を出版した。 1.栗林均編『伝統的モンゴル語辞書資料集』(東北大学東北アジア研究センター、2015年12月、B5判352頁)では、「御製満蒙合璧清文鑑」(1717)、「御製満蒙合璧清文鑑(満洲文字表記)」(1743)、「御製満珠蒙古漢字三合合璧清文鑑」(1780)の序文と凡例を影印で公刊して文献学的情報を整理した。これらは、モンゴル語を含む初期の「清文鑑」に位置付けられ、収録されている語彙の大部分は18世紀初期の清文鑑の言語特徴を踏襲している。 2.栗林均編『蒙漢字典-モンゴル語ローマ字転写配列-』(東北大学東北アジア研究センター、2016年1月、B5判608頁)では、『蒙漢字典』(1928)のモンゴル語の見出し語をローマ字転写してアルファベット順に配列し、元のモンゴル文字と漢語訳語、原本の出現位置を付して公刊した。この辞書の内容は、1891年に木版で出版された『欽定蒙文彙書』をそのまま継承するもので、その収録語彙は清朝時代の官製辞典の特徴を反映している。 紙媒体による公刊と合わせて、これらの言語資料をパソコン、インターネットで利用する方法と問題を検討するために、「東北アジアの言語資料の電子化利用」と題する国際シンポジウムを2015年12月に仙台国際センターで開催した。研究の成果の一部は東北大学東北アジア研究センターのWebサーバにおいて、公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究期間において、清朝の公用語としての「近代モンゴル語」の実態を研究するために、1)官製辞書、2)官製史書・勅語、3)档案文書という3つの分野における資料を分けて研究する計画を立てている。今年度は、それらのうち、1)にあたる清朝時代に編纂、公刊された一連の大型官製辞書を研究対象として、それらにおけるモンゴル語の実態を研究することを計画した。計画に従って、「清文鑑」とよばれる清朝の大型官製辞書の文献学的情報を整理して、それらの編纂の経緯を資料集として出版するとともに、具体的な一冊の辞書(『蒙漢字典』)を取り上げて収録語彙の研究を進め、約2万項目におよぶ全ての項目をモンゴル語のローマ字転写、モンゴル文字、漢語訳語を対照させてローマ字転写配列の辞書として公刊することができた。 研究対象とする資料は、いずれも大型の官製辞書で、モンゴル語とともに満洲語、漢語を含むことから、資料を整理する作業には多くの時間と労力が必要であるが、研究の大半をこうした恒常的な作業に向けている。3年間の研究期間に3つの分野の文献資料を研究する計画をたてているが、それぞれが単年ごとの課題として完結するものではなく、初年度に遂行した清朝の「官製辞書」のモンゴル語の研究は、次年度以降も引き続き資料の整理と文献学的・言語学的な分析・考察を継続して遂行する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
3年間の研究期間において、清朝の公用語としての「近代モンゴル語」の実態を研究するために、1)官製辞書、2)官製史書・勅語、3)档案文書という3つの分野における資料を分けて研究する計画を立てている。 今年度は、1)にあたる清朝時代に編纂、公刊された一連の大型官製辞書を研究対象として、研究を行い、研究成果の一部を公刊することができた。計画に示した文献資料の3つのジャンルは、単年ごとに完結する課題ではなく、今年度に遂行した清朝の「官製辞書」のモンゴル語の研究に関しては、次年度以降も引き続き資料の整理と文献学的・言語学的な分析・考察を継続し、それとともに2)官製史書・勅語、3)档案文書という分野の研究を合わせて進める。具体的には、平成28年度には、2)官製史書・勅語にあたる『満洲実録』および『三合聖諭廣訓』を研究対象としてモンゴル文語の言語的特徴を研究する。 研究成果の公開に関しては、紙媒体による資料集、論文の公刊とともに、インターネットによる利用を進め、現在公開している「資料検索システム」のデータの点検と、運用・利用方法の改良を進める。
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Research Products
(6 results)