2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02543
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山本 雅代 関西学院大学, 国際学部, 教授 (40230586)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 受容バイリンガル / 英語-日本語 / 言語使用 / 言語選択 / 言語発達 / 談話方略 / カタカナ語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英語を優勢言語、日本語を劣勢言語とするバイリンガル女児が、日本語をいかに使用しているかを、その母親との対話データの分析から明らかにすることを目的としたものである。今年度も、親子の言語選択・使用の形態が時間経過と共に流動的軌跡を描きながら、ある方向を指して変動していること--英語の使用が増加、日本語の使用が減少--が明瞭であった。前→今年度のデータ (%) を示すと、英語使用が増加 (母女児共に英語:4.7→15.7/母が英語と日本語混合、女児が英語:22.6→30.0)、日本語使用が減少 (母が日本語、女児が英語:71.7→53.4) であった。 また、今年度のデータから母親の言語使用に関し、新たな知見を得た。それは、時折、母親が日本語での発話の中で、本来、英語である語を使用しながら、それをカタカナ読みしているように用いていることである。英語の使用を避けようとしながらも、日本語では女児に内容がうまく伝わらないと感じてのことか、英語と日本語の折衷案ともとれるような使用方法である。99本目のデータから3例を挙げる。いずれも母親から女児への語りかけである。 ・いつ、コリアに行ったんだっけ? ・うん。そうね。スノーで遊んで、雪は降ってなかったんだよね。 ・いっぱい、ほら見て、カイトが飛んでいるよ。 実際に、英語を用いているのであれば、各々、“Korea,” “snow,” “kite” の英語発音になるはずが、日本語の「韓国」でもなく、「雪」でもなく、また「凧」でもない、英語をカタカナ読みしたかのような [コリア], [スノー], [カイト] となっている。興味深い言語の使用の仕方であり、改めて全期間を通じての使用状況を見直してみたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね」としたのには、以下の問題点があったためである。
1.本研究の研究対象家族の種々の事情から、毎月のデータ採録が不規則になり、安定した定期的なデータの収集が滞りがちになった。平成28年度・29年度はいずれも12回中5回が欠損であった。 2.前年度と同様に、調査対象者の女児が、未だ反抗期の年齢にあり、録音での協力は続いているものの、面談での協力が得にくい状況があった。 但し、いずれの問題も解決可能な範囲のことであり、今後、改善を進めていく(2に関しては、次項で言及)。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. データ採録は2018年3月の採録100本目を以て終了とした。今後は、これらのデータの更なる分析を進め、全体のまとめを行う。ついては、研究対象の家族への更なる事実確認や意見聴取などを必要とするため、さらに面談の機会を持つ予定である。研究対象家族には、すでにその旨を伝え、次年度の再度の面談を依頼済みである。 2. 上記【現在までの進捗状況】の理由2において述べたことと関連して、ここしばらく面談において積極的な協力を得ることが難しい状況にあった女児ではあるが、母親からの情報によれば、最近は、以前よりも、日本語に感心を示し始めてきているとのことである。ついては、次回の面談では、女児の関心を引きそうな、日本や日本語に関する話題を中心に据えるような面談をしたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
(理由)理由は大きく2つある。第1の理由は、昨年度と同様の報告を重ねることになるが、平成28年度開始直後の当方の怪我(鎖骨の骨折)により、年2回実施する予定であった海外出張のうち、1回ができなくなり、その出張にかかる費用として計上していた予算が、平成29年度にも手元に残ったことである。第2の理由は、既述の通り、研究対象家族の事情から、平成29年度のデータ採録が不規則となり、12回中5回の採録を欠いた。そのために録音の謝金および文字起こしに係る費用の支出が通常年度よりも少なく、残高が出たことである。これら大きく2つの理由から、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度の計画としては以下の2点である。第1の計画は、10年に亘るこの縦断研究の全体のまとめを行うことを予定しているため、研究対象家族にさらに面談を行う必要があり、そのための費用として使用することである。第2の計画は、文字起こしデータの一部を分析プログラムであるCLAN を用いて分析ができるようにするためのトランスクリプト化を行う予定でおり、このトランスクリプト化の作業に係る費用として使用することである。この作業については、すでに、その経験が豊富な院生に依頼をし、承諾を得ている。
|
Research Products
(1 results)