2016 Fiscal Year Research-status Report
日本古写本単経音義における異体字研究―『大般若経音義』三種を中心として
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15K02580
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
梁 暁虹 南山大学, 総合政策学部, 教授 (00340274)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 仏経音義 / 大般若経音義 / 漢字 / 異体字 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は平成27年度に得られた研究成果を基にして、奈良から鎌倉時代にかけて用いられた異体字の一つ一つを対象に、「三種音義」との内容の異同、特徴、さらにその他の同時期の単経音義古写本といかに関連付けられるか比較研究を行った。これら予定した作業はほぼ完成したと言える。 初年度に行なった一次資料の整理、分析、解読作業を基礎として、主に「三種音義」にみられる異体字について図像文字を作成し、排列・分類した。それらを他の単経音義中の異体字形と比較し、日本古代「単経音義」異体字データベースを構築作業に資した。従来の異体字研究の成果をふまえながら、日本人僧侶による異体字詮釈を分析することで、彼らの漢字、語彙、表現、及び内容の理解、認識等を分析抽出し、シンセシスに挑戦した。 研究成果としては、「天理本『大般若経音義』漢字研究」、「古代日僧所撰三種『大般若経音義』異体字研究」という二編の論文を執筆、前者は国立台中教育大学、中国文字学会主催の第二十七回中国文字学国際学術研討会にて発表後、『第二十七回中国文字学国際学術研討会論文集』に公刊された。後者は近代漢字第一回学術年会にて発表、修改を経て『近代漢字研究』第一集に投稿、2017年中に出版される予定である。さらに、昨年投稿した論文も出版された、本課題と直接関係するものとしては、「従無窮会本『大般若経音義』“先德非之”考察古代日僧的漢字観」、「無窮会本『大般若経音義』与異体字研究」等がある。本年度は、『大般若経音義』の資料調査の範囲を拡大し、文献考証学的角度から仏経音義資料研究考察を試みる。既に①「高山寺蔵古写本『華厳伝音義』論考」、②「信瑞『淨土三部経音義集』的語料価値研究」、③「日僧湛奕著『淨土論注音釋』考論」、④「日僧湛奕著『淨土論注音釋』考論」、⑤「淨土三経音義在日本―以乘恩撰『淨土三部経音義』為中心」等の論文を学術会議にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
近十余年、私は、「日本仏経音義研究」、特に日本の仏経音義と漢字研究を重点的に研究してきた。異体字の研究は、漢字研究の重要な部分であり、特に「三種音義」中の異体字使用現象に関して研究を進めてきた。本研究費を受け、当然研究条件が大きく改善され、特に資料方面では、その收集はほぼ完成した。今後は、更に必要な新しい資料、入手に面倒な写本資料収集に努める。研究方面では、最も代表的な無窮会図書館蔵本『大般若経音義』(巻上)の異体字研究を完成し、無窮会系『大般若経音義』中重要な天理本の漢字研究も行った。使用した資料及び成果を更に拡大し、三種の『大般若経音義』所見異体字については、既に研究を開始した。また日中異体字の比較研究の成果を取り入れ、古代日本写本仏経中の異体字使用現象を探究、古代の日本人僧侶が異体字について如何様に認識理解していたか、また漢字が海外へと伝播していった文化的な角度から漢字の発展、変化等についても考察した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は、交付した申請書の研究計画から大幅に逸脱することなく、順調に進んでいるため、変更する必要がないと自負している。具体的には、「研究実績の概要」欄でも言及したが、特に、①無窮会本系統『大般若経音義』の諸写本中、重要な天理本『大般若経音義』中の異体字研究を進め、更に、もう一つの重要な写本薬師寺本中の異体字についての“個案”研究、無窮会本と照合、比較分析を試みる必要があり、また②過去2年間研究してきた「三種音義」中の『大般若経音義』(奈良時代の僧信行撰、石山寺本、平安初期写本)、『大般若経字抄』(藤原公任撰、石山寺本,平安末期写本)中における異体字使用現象との比較分析をする必要がある。これは、「三種音義」の異体字の綜合研究となり、其の他の写本仏経音義中の異体字現象とを関連させながら研究することになろう。かかる研究は、日本の中世仏経音義資料中の異体字使用現象の全面的な研究に進展することになると思われる。このためには、資料調査の範圍を拡大させ、国内外の漢字研究專門家と学術交流をする必要がある。
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Causes of Carryover |
夏季休暇期間内に行った、学内の他業務での出張と兼ねて2回分の出張旅費を節約することができたため。また、10月28日~11月7日までに中国で開催された3つの学会について、1回の出張でまとめたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下の出張などの経費に使用予定。 ①2017年4月14-17日、第4回東亜文献研究国際学術研討会(揚州大学、中国江蘇省、揚州市)。②2017年10月19-21日、2017訓詁学会学術研討會(嘉南藥理大学儒学研究所、台湾台南市)③2017年11月2-6日、第十一回漢文仏典言語学国際シンポジウム」(佛光大学佛教研究中心、中央大学文学院、台湾台北―高雄)。④国内調査:2017年9月、11月 古写本文献収集:靜嘉堂(東京)、杏雨書屋(大阪)等⑤招へいにかかる経費:仏経音義と漢字研究の専門家招へい(資料調査、資料交換、学術意見聴取とを含んだ学術交流)
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Research Products
(11 results)