2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02698
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
上村 妙子 専修大学, 文学部, 教授 (30205926)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文法指導 / 日本人英語学習者 / 教員 / 文法テスト / 正答率 / 誤答 / 困難度判定 / 学習指導要領 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高校生・大学生が不得手とする文法項目を明らかにし、文法指導において焦点を当てるべき文法項目とその項目に対する効果的な指導方法を考案することである。 本年度は、パイロット調査として、高等学校の英語科テキストに掲載されているモデル文の中で中学校での既習文法項目を扱っているものに限定した文法テストを作成し、大学1年生と高等学校1年生にこのテストを実施した。その結果、高校生・大学生ともに習得できている項目、大学生は習得できているが高校生は習得できていない項目、高校生・大学生ともに習得できていない項目が明らかになり、文法能力の習得過程の一部が明らかになった。 この結果をもとに、本研究として、まず『中学校学習指導要領解説・外国語編』(2008)と『高等学校学習指導要領解説・外国語編・英語編』(2010)に記載されている全文法項目に関する文法テストを作成し、大学入学直後の大学1年生を対象にテストを実施した。さらに、『中学校学習指導要領解説・外国語編』に記載されている文法項目に限定したテストを高等学校入学直後の高校1年生を対象に行った。 大学生のデータに関しては、各文法項目に対する正答率を求め、習得が容易である項目と困難である項目を明らかにした。習得が困難である項目については誤答分析を行い、エラーの原因を考察した。さらに、テストを受験した大学生に対し、それぞれの項目の難易度を判定する調査を行った。難易度と正答率との関係を調査した結果、大学生にとって特に難しく感じられ、また正答率も低かった項目は高等学校で学ぶ文法項目であり、その中でも関係詞の非制限的用法が困難項目であることが判明した。一方、中学校で学ぶ過去進行形や過去形の受け身など基本的と思われる項目については学生は易しいと判断しているものの正答率は低く、指導上注意すべき項目であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
さまざまな文法項目を対象とした日本人大学生と高校生の文法能力を測定するにあたり、パイロット調査を用いておおよその傾向を見出すことができた。 また、さらに扱う文法項目の種類を網羅的にするため、本研究では『中学校学習指導要領解説・外国語編』(2008)と『高等学校学習指導要領解説・外国語編・英語編』(2010)を参考に文法テストを作成し、高校生と大学生に文法テストを実施した。大学生については正答率と誤答、および難易度判定の分析も行うことができた。ここまでの段階で、受験者の中でも英語力が不十分である大学生に対する文法指導においては、どの文法項目に焦点を当てればよいのか、また学生がおかしやすい間違いに対処するためにはどのような指導を行えばよいのかについての指針を示すことができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は分析が終わっていない高校生のデータを対象に、さまざまな文法項目に対する正答率、誤答の傾向、および困難度判定の結果を明らかにしていく。これらの結果を大学生のデータの分析結果と比較することにより、日本人英語学習者の文法能力の習得過程の一部が明らかになるものと期待できる。 また、これまでの調査により学生のデータは収集できたので、英語科教員のデータを収集する予定である。具体的には大学生に対して用いた文法テストをもとに、各文法項目に対して学生が抱くであろう困難度を判定してもらう。次いで、学生の困難度判定と教員の困難度判定を比較し、両者の間で、どの項目においては判定が類似し、どの項目において判定が乖離しているかを調査する。学生と教員双方の視点を取り入れた文法指導と学習のあり方を模索していきたい。 さらには、現役の高校教員から現場における文法指導の困難点や効果的な指導法についての意見を聴取し、本研究の分析結果と教育現場との関係も探っていきたい。
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Causes of Carryover |
高校生と教員に関するデータ分析が終了しなかった。また大学生のデータ分析に時間が割かれ、海外での学会発表を数回にわたって行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は高校生と教員から得たデータを入力し分析するための謝金に使用する予定である。また今年度は分析結果をさらにまとめ、海外での国際学会でも積極的に発表を行っていきたい。
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Research Products
(3 results)