2017 Fiscal Year Research-status Report
明示的・暗示的言語知識テスト開発と個人差-脳科学的アプローチによる検討-
Project/Area Number |
15K02745
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Thyreau Benjamin 東北大学, スマート・エイジング学際重点研究センター, 助手 (30709522)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 第二言語知識 / 明示的知識 / 暗示的知識 / 脳機能イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
高度な英語力を養成することが日本の英語教育の課題であるが、それを支える明示的(言語)知識と暗示的(言語)知識の育成法やその評価法に関する研究は大幅に遅れている。本研究は、脳機能イメージングの手法を用いて、第二言語学習者の暗示的知識と明示的知識の習得プロセスの脳メカニズムの解明と、そのメカニズムに影響を及ぼす個人差要因の特定を目的とした。 平成27年度には暗示的知識と明示的知識を測定するテスト(文法性判断課題)を30名の英語学習者に予備実験を実施した。平成28年の3月から9月までは客員研究員として、アメリカのペンシルベニア州立大学の心理学・神経言語学研究室(PingLi教授)に滞在しながら、言語の暗示的知識と明示的知識の脳内メカニズムに関する理論的検討と情報収集を行った。また、第二言語習得や明示的・潜在的知識の脳メカニズムの世界的研究を行っているジョージタウン大学にも9月と3月の合計2回招待講演を行い、最近の研究情報と解析手法に関する情報を取集した。 平成27年度のデータを分析した結果、日本で英語を学習している英語学習者のほとんどは明示的知識が司る領域で英語の文法を処理しており、暗示的知識の処理に関連する脳領域の関連はほとんど認められなかった。この結果を受け、平成29年には、研究結果が他の言語学習者にも当てはまるのか、また、第二言語環境で第二言語を学習している学習者は暗示的知識を有しているのかを検討するために、日本に滞在しながら日本語を学習している中国語母語話者を対象に暗示的知識と明示的知識のそれぞれを測定する課題を用いて課題遂行中の脳活動を測定する追加実験を行った。現在、追加実験は継続中で、目標の半分のデータの収集ができた。30年度にはデータを分析し、これまでの研究成果をまとめ、論文として投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、平成27年と28年に行ったMRI実験データを分析した。その結果、日本で英語を学習している多くの学習者は明示的知識に依存しながら英語を処理していることが明らかになった。その結果を追試することと、暗示的知識に関連する第二言語処理を検証するため、日本で日本語を第二言語として学習している中国語母語話者を対象とした追加実験を平成29年度に実施した。現在、30名の学習者データの測定が終了した。平成30年度には比較対象の日本語母語話者のデータの測定も行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まず、追加実験のデータの分析を行う。次いで、これまで行った日本人英語学習者の研究成果と、中国人日本語学習者のデータを比較する。さらに、第二言語の暗示的知識と明示的知識の脳内メカニズムが習熟度、言語環境、言語課題、言語適性によってどのように現れるのかを検証する予定である。これまでの実験データや収集した情報をまとめ、レビュー論文や研究結果をまとめ出版する予定である。
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Causes of Carryover |
殆ど計画通りに研究予算の執行はできたが、わずかの金額が残った形である。平成30年度には追加実験を完了させ、これまでの実験結果をまとめる計画で、被験者や実験補助者の人件費、英文校閲の費用として用いる。
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