2016 Fiscal Year Research-status Report
習熟度の違いにおける英文読解時の視線動向と内的翻訳に関する研究
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15K02799
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
宍戸 真 東京電機大学, 情報環境学部, 教授 (20247084)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教育評価・測定 / 英文読解力 / 視線計測 / 眼球運動 / 効果測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、前年に実施した実験のデータを分析し、その結果をまとめ、関係学会において2回口頭発表を行った。 CEFRのレベルA1~B2の英語習熟度の異なる日本人大学生が、Readability(ARI)が5~20の難易度の英文を読んだ際、英語習熟度によって視線の注視時間が異なり、英語習熟度と視線の注視時間・回数に相関があることが明らかになった。習熟度が高いものほど,注視時間は短く,回数も少ない。また,英文の難易度に関しても習熟度と相関している。難易度が高くなるにつれ,注視時間が長くなり,注視回数も増えることがわかった。さらには,これらの視線動向の特徴は,つぶやき読みや内的翻訳とも関連していることがわかってきた。 実験開始時にはOxford University PressのQuick Placement Testを利用し,被験者の英語習熟度の測定を行い,CEFRに基づき,B2,B1,A1に対象者を分類した。各レベル10名,合計30名を対象として実験を行った。3レベルに分類された日本人英語学習者が,4つの異なる難易度の英文において読解活動を行った際,習熟度別、Readability別にそれぞれの視線動向の特徴を注視点のデータを用い計測,分析した。また,読解行動の分析として,つぶやき読みや内的翻訳の干渉に関して,実験後にアンケートを行い調査した。 これらの結果から,視線動向の注視時間に関する特徴は,英語習熟度ばかりでなく,英文の難易度と相関しており,認知的な要素も英語習熟度や英文の難易度と相関があることがわかった。習熟度が高くなるにつれて注視時間は短く,ばらつきも小さくなり,回数も少なくなる。また反対に,英文の難易度が高くなるにつれて,注視時間も長く,ばらつきが大きくなり,認知的要素の干渉を受けやすくなることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CEFRに基づき,B2,B1,A1に対象者を分類した。各レベル10名,合計30名を対象として実験を行った。3レベルに分類された日本人英語学習者が,4つの異なる難易度の英文において読解活動を行った際,習熟度別、Readability別にそれぞれの視線動向の特徴を注視点のデータを用い計測,分析した。また,読解行動の分析として,つぶやき読みや内的翻訳の干渉に関して,実験後にアンケートを行い調査した。これらの実験のデータを分析し、その結果をまとめ、関係学会において2回口頭発表を行った。 当初の計画通り、順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,実験の結果から得られたデータを参考に,習熟度の低いものが,視線の注視動向を改善することで,英文読解力を効果的に向上させることができるようなE-Learning教材やトレーニングを開発すること研究へと移行してきたいと考える。 さらには、下位レベルの学習者においては、ボトムアップ処理(Gough, 1972)を中心とした読解過程を利用していること、内的翻訳(Kern, 1994)などの母国語の影響がみられることも実証したい。また、上位レベルの学習者においては、トップダウン(Smith, 1971, 1987)による読解過程を利用すること、Predicting Previewing, Scanning, Skimmingなどの読解ストラテジーの行使、メタ認知的モニタリングに関するつぶやき読みの分析などを行い検証する予定である。中位レベルの学生においては、ボトムアップ、トップダウンのどちらの処理を行うのか、または相互作用的な処理(interactive models) (Stanovich, 1980)を好むのかなどを分析し、それぞれの読解活動における境界線が明白にできるか検証する。
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Causes of Carryover |
研究計画の当初から最終年度である2017年秋にカナダで開催される国際学会での研究発表を最終目標としていた。近年航空券、ホテルの宿泊費が高騰していることから、2016年度分と2017年度の分に予定していた旅費を合算して利用することで、経費をまかなえると考えた。2016年度は科研費の旅費を利用せず、勤務する大学の研究費を用いてハワイでの研究発表に参加した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年は9月に島根大学で行われる日本教育工学会全国大会、10月にカナダ、バンクーバーで行われる国際学会で研究成果を発表を計画しており、それぞれの旅費に利用する。
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