2016 Fiscal Year Research-status Report
冷戦期米英世界戦略と帝国的秩序の再編、1952年‐1954年
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15K02821
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
鈴木 健人 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任教授 (90275397)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 世界戦略 / 防衛政策 / 米英首脳会談 / 原爆攻撃 / NATO / 中東 / 日本 / 東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目の2016年(平成28年)8月より明治大学から在外研究を命じられ英国のロンドンに滞在しながら研究を進めている。客員研究員としてロンドン大学アジアアフリカ研究学院に所属している。ロンドン郊外キューガーデン近くの英国立公文書館で一次史料を調査収集している。1950年代前半の英国外交軍事戦略において重要な役割を果たした、1950年の「世界戦略と防衛政策」報告書と、1952年の同様の報告書を入手して比較研究した。またそれらの文書がアメリカ国務省や国防省へ伝達されたことが確認できた。 米英間でこうした世界戦略に関する調整が進められた一方で、ソ連に対する核戦争の発動用件に関しては深刻な対立があったことが判明した。アメリカは対ソ連原爆攻撃の開始事由として、NATOや中東への攻撃とともに、日本に対する攻撃をもそれに加えていた。これに対して英国は日本に対するソ連からの攻撃に対して、対ソ原爆攻撃を開始することに反対していたことが判明した。 米国は英国に空軍基地を確保し、英国とともに西欧を防衛する態勢を整えたが、中東と東南アジアに関しては、英国が主要な戦略的役割を果たすことを期待していたことが確認できた。英国はソ連に対する原爆攻撃を実施する際には、事前に協議するよう米国側に要請し、1950年12月に開かれた米英首脳会談において、アトリー首相がトルーマン大統領から口頭による了解を取り付けたとされたが、米国側はそのような了解を必ずしも深刻には受け取っていなかったことが判明した。 今後は1952年の「世界戦略と防衛政策」報告書を中心にして、1952年1月に行われた米英首脳会談において、どのような戦略的合意が形成されたかを確認する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
在外研究の機会を生かしながら、ロンドン大学での文献調査だけでなく、英国立公文書館での史料調査を集中的に実施できるため、順調に研究が進展している。 研究対象となる時期の史料公開が予想よりも進んでいるため、首相府や内閣はもちろんのこと、参謀本部や外務省の文書も順調に調査し収集することが可能になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年2017年(平成29年)8月上旬をもって、一旦ロンドンでの在外研究を停止し帰国するが、9月下旬から再度、数ヶ月間ロンドンに滞在し史料調査を継続する予定である。その間に英国側で必要な史料の調査と収集を終えることができると考えている。 その後、アメリカのワシントン郊外にある米国立公文書館で米国側の史料を調査収集し、研究を終える予定である。米国側の史料は過去の史料調査と収集でかなり進んでいるので、米英の史料調査が終わり次第、論文や学会発表などで成果を公表していく予定である。研究は予定通り進んでいるので、計画の変更は必要ないと考えられる。
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Causes of Carryover |
2016年(平成28年)8月から在外研究を命じられ、そのための経費が明治大学より支給されたので、海外渡航費と滞在費が不必要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年(平成29年)9月以降は、大学から海外渡航費と滞在費が支給されないので、ロンドンでの史料調査と収集のために使用する予定である。
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Research Products
(1 results)