2015 Fiscal Year Research-status Report
10~13世紀東部ユーラシア仏教史の構築に向けた基礎的研究
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15K02919
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
藤原 崇人 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (50351250)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 契丹仏教 / 石刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,唐代以降の漢訳仏教の展開を,「中華」という限られた枠組みではなく,「東部ユーラシア」という大きなまとまりのなかで把握するための土台形成を目指し,騎馬遊牧系国家の契丹(遼,907-1125)のもとに形成された仏教に注目して,その後代(金・元時代)における展開と影響を具体的に捉えることにある。ここにおいては,既存の編纂史料のみならず,仏教石刻や新出仏教典籍,そして仏教文物など文字と実物体双方にわたる第一次史料を積極的に活用し,10~13世紀の東部ユーラシアにおける契丹を基軸とした仏教文化情報の動線を明らかにする。 本年度は,まず契丹仏教の経過を具体化するための基礎作業として,契丹・金・元の各時代に刻記・立石された仏教石刻(僧尼の墓碑・寺院や仏塔の造修碑・勧進碑・文牒碑・四至碑など)の情報を各種の金石書・石刻図録・地方志・報告書等から網羅的に収集・整理し,当該史料のデータベースを作成することに注力した。 上記作業と並行して,契丹以降における世俗権力の「仏戒」伝授の主導実態とその聖的秩序(仏教教団・在家信仰組織等)への干渉のありかたを明らかとするため,元代において特徴的に確認される「資戒会」に注目し,当該法会の具体的な内容と催行の意義を明らかにした。その考察の結果は平成27年度九州史学会大会(於九州大学,12月13日)および『関西大学東西学術研究所』第49輯において公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の土台となる契丹・金・元代の仏教石刻データベースの作成を当初の予定以上に進行させることができた。具体的に言うと,本年度は300碑前後の史料情報の収集・整理を目標としていたが,実際にはこれを大きく上回る465碑を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も契丹・金・元代の仏教石刻データベースの作成を進め,最終的には800~1000碑程度の史料情報の収集・整理を達成したい。 当該データベースを活用して抽出した石刻,さらに新出の仏教典籍や仏教文物を用いて,「僧尼の法統」「得度受戒制度」「密教および禅文化」の各方面から契丹仏教の金・元代における継承と展開の実態を明らかにする。
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Causes of Carryover |
データベース作成の補助作業にあたる学生アルバイトの勤務開始月が当初の予定より少し遅れたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下①~③の費用として使用する。①契丹・金・元代の仏教史に関わる図書費・資料収集費。②契丹・金・元代仏教資料の実見調査(中国および日本国内)費用。③データベース作成の補助作業にあたる学生アルバイトの賃金。
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