2016 Fiscal Year Research-status Report
10~13世紀東部ユーラシア仏教史の構築に向けた基礎的研究
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15K02919
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
藤原 崇人 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (50351250)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 契丹仏教 / 捺鉢 / 法会 / 度僧制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,唐代以降の漢訳仏教(中国仏教)の展開を「中華」という限られた範囲ではなく,「東部ユーラシア」という大きな枠組みのなかで把握するための土台形成を目指し,騎馬遊牧系国家の契丹(907-1125)のもとに形成された仏教に注目して,後代(金・元代)におけるその展開と影響を具体化することにある。 本年度も昨年度と同様に,契丹仏教の経過を具体化するための基礎作業として,契丹・金・元の各時代において刻記・立石された各種の仏教石刻(碑刻)のデータベース作成につとめた。また本データベースに収録した石刻のなかで,とくに重要と考えられる史料の実見調査を含めて,2016年8月に北京市・内モンゴル自治区・遼寧省・山西省に赴き,現地に存する契丹・金・元代の寺院址・仏塔および仏教文物の現状確認と情報収集を実施した。 上記と並行して,当時の王権と仏教の不可分性を改めて具体化するべく,契丹皇帝の季節移動の宿営地において開催される法会の位置づけを考察し,その成果を2016年度唐代史研究会夏季シンポジウムにおいて「捺鉢と法会─道宗朝を中心に─」と題して報告したほか(発表内容は論文として『唐代史研究』20に掲載予定),国家による僧尼産生システム,とりわけ皇帝の恩沢に基づく「皇恩度僧」に注目して,その通時代的な把握を試み,「皇恩度僧の展開─宋~元代の普度を中心に─」(原田正俊編『宗教と儀礼の東アジア─交錯する儒教・仏教・道教─』勉誠出版,2017年)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初訪問を予定していた内モンゴル自治区東部および遼寧省西部に所在する複数の博物館が,改築・移転などの理由により未開館の状況にあり,実見できない史料があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
新刊の石刻図録等も使用して引き続き仏教石刻のデータベース作成をすすめる。また本年度は河北・山西省に現存する契丹・金・元代の仏教遺跡・文物の実見調査を実施するとともに,2016年度の中国調査において未開館のため訪問を断念した博物館(内モンゴル自治区東部・遼寧省西部所在)の所蔵史料をあらためて調査する予定である。
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Causes of Carryover |
2016年度の中国調査においては,改築・移転などの理由により訪問を断念した博物館が複数あった。当該施設の所蔵史料調査を,2017年度に元々予定している調査に加えて実施するための旅費に充てるべく,経費出費を抑えたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度の配分金の残額については昨年度の中国調査において訪問を断念した博物館(内モンゴル自治区東部・遼寧省西部所在)における史料調査の経費として使用する。2017年度配分金については本年度に予定している中国(河北・山西省)における史料調査の経費,関連史料・文献の購入費,史料データベース作成に関わるアルバイト代,印刷費,複写費に充てる予定である。
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