2017 Fiscal Year Annual Research Report
Social differentials and local finance in multi-cultural Central Europe in early 20th Century
Project/Area Number |
15K02927
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邊 竜太 東北大学, 国際文化研究科, CSICSフェロー (40596524)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 東欧現代史 / チェコスロヴァキア現代史 / オーストリア現代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
一昨年度末から昨年度初めにかけ、チェコ共和国国民図書館(プラハ)及びヘプ国立郡文書館において、主に両大戦間期チェコスロヴァキアの地方自治に関する専門誌と、西部国境のヘプ市の行財政に関する文書を閲覧すると共に、地方自治、社会政策、「民族問題」、ヘプ市の歴史などに関する現地における研究の成果を収集した。この史料収集は、当初の計画では、初年度に行う予定であったが、肉親の病気、死去およびそれに伴う諸手続等が生じ、海外に渡航できなかったため、実施が遅れた。昨年度は、収集した史・資料に基づき、両大戦間期チェコスロヴァキアにおける地方行財政に関する先行研究の論点の整理とその問題点の検討を行うと共に、ヘプ市を具体例として、実態の実証的解明のための作業に着手した。昨年度は、以上の基礎的作業に専念したため、研究報告や論文の形での成果の発表は行わなかったが、研究の成果は、今年度中に論文として発表すべく準備中である。 本研究の成果として、次に発表を予定している論文は、これまでに明らかになった、両大戦間期チェコスロヴァキアにおける市町村の歳入構造の地域間の差異を、地域間の経済構造の相違に基づき実証的に説明することを目指すものである。具体的には、ヘプ市のような、税への依存が小さい市町村の財政の構造を、市有林などの税外収入の役割に着目して明らかにすると共に、税と税外収入を財政構造全体の中に位置づけ、財産収入に多くを依存する財政の限界を剔抉することを目標とする。一昨年度以前には、旧オーストリアの地方財政制度が、地域間・文化集団間の社会的格差を解消し得る有効な財政調整制度を欠いていたことを指摘し、その問題点を明らかにしたが、今後成果の発表を予定している研究では、上述の財政制度が一継承国にもたらした諸問題を実証的に明らかにすると共に、それを通して、チェコスロヴァキアの政治システムの特質をも考察するであろう。
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