2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02963
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小川 真和子 立命館大学, 文学部, 准教授 (60443610)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ハワイ / 日本人漁業 / ハワイ準州農林行政委員会 / ポインデクスターハワイ準州知事 / FBI / 漁業調査 / ハワイ金刀比羅神社 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に引き続き、ハワイにおける水産業の発達と日米関係についての一次資料収集を日本、アメリカ両国にて行った。特にアメリカ合衆国公文書記録管理局が所蔵する、ハワイ準州や米連邦政府による、ハワイならびにその近海の漁業調査関連資料や、戦前から戦後にかけて米連邦捜査局(FBI)が行っていた「ハワイ金刀比羅神社」関連の調査報告などの資料の発掘は大きな成果である。 これらの一次資料から、戦前、日本人漁民が訴えていた米連邦政府主導の漁業調査の必要性を、ハワイ準州農林行政委員会やポインデクスター準州知事も認識し、第二次世界大戦中から戦後直後にかけて、連邦政府による太平洋漁業調査法案の可決へ向けて連邦議会に働きかけていたことが明かになった。 また「ハワイ金刀比羅神社」関連資料によって、FBIが開戦前から同神社を始め、アメリカ国内に存在する神社を調査し、日本帝国の手先機関としての認識を持っていたこと、それによって戦後、ハワイ金刀比羅神社の資産が米司法省によって没収されたことが分かった。さらにこの資料は単なるハワイの日本人水産業のみならず、連合国総司令部(GHQ/SCAP)の占領下に置かれていた日本において発令された「神道指令」との関連性が指摘できるなど、今後の日米関係の研究にも新たな視点を加えるものである。 これらの研究成果の一部を、筆者はマイグレーション研究会例会(12月3日於同志社大学)にて報告した。また現在執筆中である単著『海の民のハワイ―ハワイの水産業を開拓した日本人の社会史』(人文書院より刊行予定)や、次年度に行う国際学会での研究報告においても、これらの研究成果が反映される予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初予定していなかった、冷戦初期におけるハワイ並びに日本の漁業と米連邦政府の漁業政策に関する一次資料や、同じく冷戦初期におけるハワイ金刀比羅神社の資産没収事件に関する一次資料の発掘を行うことが出来た。これによって20世紀初頭から大戦中だけでなく、戦時中から戦後初期にかけてのハワイの水産業と日米関係に関する新たな知見を得ることが出来た。またこれらの研究成果を盛り込んだ単著の執筆も順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度となる平成29年度は、これまでの研究の総仕上げとして、引き続き国内外における資料収集の補足調査を行う。また本研究課題をまとめた単著の刊行に向けて、執筆作業を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
書籍の購入時期が年度末になったため会計処理が間に合わず、次年度の使用に回すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
会計処理が年度末にならぬよう、計画的な予算執行を行う。平成29年12月下旬までに具体的な会計処理の手続きを行う。
|