2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02987
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
平野 修 帝京大学, 文化財研究所, 講師 (90620865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河西 学 帝京大学, 文化財研究所, 講師 (60572948)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 蝦夷 / 俘囚 / 夷俘 / 移配 / 強制移住 / 長煙道カマド / 黒色土器 / 平安時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、昨年度に行えなかった研究協力者との研究会議を年度明け早々に開催し、今後の研究活動方針などをの確認を行った。研究協力者のメンバーは古代日本の考古学を専門とする岩手県、福島県、栃木県、茨城県、千葉県、埼玉県、神奈川県、山梨県等の各地域の研究者から構成されており、こうした研究協力者の方々には、9世紀代を中心とする遺跡の中で東北地方に顕著にみられる長煙道カマドをもつ竪穴建物や黒色土器が目立つ遺跡の存在の有無の調査を各地域ごとにお願いした。これは民族的にも自分たちが住む家や着るもの、食物、信仰など、自らの土着の生活信条に固執する傾向が強いということからでもある。この9世紀代という時期は「俘囚」の強制移住が最も増大し、本研究のきっかけとなった俘囚の土器である「赤彩球胴甕」を出土した東京都の上っ原遺跡の時期も本時期であり、そうした状況を物語っていると思われる。 申請者自身は、昨年7月に文献史料でみられる俘囚の移配先である宮崎県(日向国)の調査を行い、その結果、長煙道カマドをもつ竪穴建物や黒色土器ををもつ集落は、日向国内の宮崎郡の一部エリアに偏っている状況を確認することができた。また9月には宮城県栗原市と岩手県盛岡市で現地の「赤彩球胴甕」と「黒色土器」の製作技法を観察するために資料実見調査と、志波城内に復元されている俘囚の竪穴建物跡といわれる復元建物の実見調査を実施した。また12月には、9世紀前後に突如として汎日本的に登場する黒色土器の出現契機が「俘囚」の移配にあるという趣旨の論文化にむけて、当該時期に黒色土器が卓越する長野県(信濃国)県内の各遺跡から出土した資料の実見調査も行った。 本年度は、来年度に行う研究成果報告会に向けて研究成果の蓄積が順調に行えた年度と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の採用が初年度である平成27年度の追加認定であったが、平成28年度は充実した研究調査活動を行うことができた年度と考えている。しかし西日本方面への俘囚移配調査が経費の予算上、宮崎県と鹿児島県のみであったことで、西日本の本州及び四国の状況を直接調査できていないのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は本課題の最終年度であり、本年11月25・26日両日にわたり「俘囚」の移配をめぐる研究成果報告会を実施することになっている。当初は全国規模で俘囚移配地における考古学的検討を行うつもりであったが、予算面や期日等の関係で今回は東日本が中心となってしまうが、現在それに向けた追加調査と調査成果のまとめを行っている。 東北地方からの蝦夷(エミシ)という移民が、古代の東国社会に及ぼした影響はいかなるものであったのか。現代にも通じるこの問題について、考古学的資料を用い広く現代の人々に伝えて行きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度は当該研究の最終年度にあたり、下記の使用計画に基づく経費を計上しているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料調査の継続と本年11月25・26日に研究成果報告会(シンポジウム)の開催を予定している。
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Research Products
(4 results)