2016 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける甲冑の変遷と祭祀利用の実態解明に関する基礎的研究
Project/Area Number |
15K02998
|
Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
塚本 敏夫 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30241269)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小村 眞理 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10261215)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 小札 / 武具片 / 鍬形 / ローマコイン |
Outline of Annual Research Achievements |
秋田城跡出土の革製小札甲と正殿跡出土小札の調査を行った。そこで直角に折り曲げた小札や埋納銭が柱の抜取り跡から出土しており、長岡京正殿跡と同様の作法であると判明した。また、沖縄県のうるま市平敷屋古島遺跡出土の小札甲は鉄製と有機質が残存、部位は不明。勝連城跡からは小札の他に武具の部品や前立、武器の部品が出土しており、鎌倉市や北海道での出土状況と酷使している。金銅製も多く、内地からの輸入品と推定される。浦添城跡出土の小札と武具片の調査を行った。小札の中に、直角に折り曲げている小札1点を含む折り曲げ小札4点を確認した。下馬周辺遺跡や秋田城他と同様の作法が確認できた。また、武具破片を多く、鍬形片を含む点も注目に値する。玉城城崖下遺跡の胸板他の武具片を確認、鎌倉や北海道と同じ作法であり、その関連性が注目される。 研究成果をまとめると、武具祭祀には3つの画期段階が認められた。①古墳時代後期に小札や小札甲が火山の鎮めや焼失住居等での祓いに利用された。この作法は関東地方で発生し、その系譜は今のところ百済地域に求められそうである。②は律令的祭祀と共に、都城にも導入された複数型式の小札埋納祭祀であり、平城京の造営を期に導入され、一部で人形祭祀と融合して、古代寺院、城柵や地方官衙等の拡散とともに地方の拠点的地域に点的に展開したようである。③は鎌倉を中心に南北に展開した武具祭祀で、小札に加えて武具の部品を埋納する作法の広がりである。この作法は東北地方の太平洋沿岸部を経由して北海道の南部・東部に段階的に波及して選択的に受容される。一方、沖縄でもこの作法はグスク時代に波及することが確認された(考古学協会で発表)。 また、資料調査の中で、勝連城跡の4の曲輪から銅製の鍛造コイン10点を確認、アラビヤ文字のコイン1点とローマコインと思われる人物像が確認できるコイン数点を発見した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小札を含む武具の祭祀利用の実態解明は北海道から沖縄地域に至る日本列島で確認できること。また時代を追って変遷していることも明らかになった。 ただ、小札甲の変遷過程、特に、①裲襠式が存在したのか、②綿襖甲が存在したのかに関しては進展がなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
小札祭祀に関しては、韓国での調査を行いその成立背景に迫っていきたい。 裲襠式が存在したのかについては、再度資料調査を進めて実態に迫っていきたい。
|
Causes of Carryover |
武具祭祀関連の研究が思いのほか早期に進展し、強度実験も完了したため。次年度に企画展を新たに研究成果の公表に加えることにして、次年度に繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
費用は2017年9月に開催予定の企画展での資料貸出の輸送費や企画展で発生する諸経費に充当する予定
|
Research Products
(1 results)