2016 Fiscal Year Research-status Report
古墳出土の釘に付着した材組織の観察からみた木棺の用材利用法と棺構造の復元的研究
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15K02999
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
岡林 孝作 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 課長 (80250380)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 考古学 / 古墳時代 / 釘 |
Outline of Annual Research Achievements |
古墳出土の釘とそれに付着した材の観察は、釘付式木棺を復元する上で欠くことのできない作業である。本研究計画は、簡易なデジタルマイクロスコープを用いた材組織の観察を行うことで、従来の肉眼観察では明らかにすることができなかった、釘との関係性を重視した材の軸方向や放射方向、年輪界のあり方など、釘の使用部位や棺材の木取り等を検討するための基礎的資料の収集を行い、釘付式木棺のより具体的な用材利用法の解明と棺構造の復元を通じて、釘付式木棺の出現と展開を、朝鮮半島における動向にも留意しながら、古墳時代木棺の総体的な展開過程の中に位置づけることを目的とする。また、金属部品を使用したその他の木製品についても、遺存する金属部品の観察から全体の復元につなげていくような応用の可能性についても積極的に検証する。 本年度は、主として文献収集による古墳出土釘の発掘調査データの収集、デジタルマイクロスコープを用いた出土釘及び関連資料の詳細な観察に基づく調書作成等を実施した。 保管機関における作業は東京都國學院大学博物館、香川県高松市埋蔵文化財調査センター、岡山県公益財団法人 倉敷考古館、群馬県高崎市観音塚考古資料館においてのべ7回実施し、簡易な実体顕微鏡等を使用して、鉄釘・鎹そのもの、および付着した木質の詳細な観察とともに、調書の作成、画像データ等の収集を行った。 高崎市観音塚考古資料館においては、群馬県八幡観音塚古墳出土鉄釘に関連して、木棺材と考えられる大型木片の三次元計測による実測図作成を行い、形態を詳細に検討した結果、被せ蓋である可能性が高いと判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年度目である本年度は、昨年度に引き続き、主として文献収集による古墳出土の鉄釘と出土古墳の発掘調査データの収集、出土釘資料の詳細な観察に基づく調書作成等を実施した。保管機関における作業は、当初6回程度を想定していたが、のべ7回実施できた。 本研究の目的を達成するためには、出土鉄釘資料の詳細な観察にもとづき、鉄釘の具体的な使用部位、材の木取りを含めた具体的な用材利用法の解明が不可欠である。本年度は、釘を使用した棺身と、釘を使用しない刳抜式の被せ蓋の組み合わせの可能性を指摘しうる良好な資料の存在が明らかになったため、棺身に使用された鉄釘自体の形態、鉄釘に付着する材(の痕跡)の観察とともに、一定の大きさで遺存する棺蓋材の三次元計測による実測図作成を行うことができた。また、昨年度、鉄釘が使用された木製器物の復元する方法の実践として、被せ蓋を有し、身に脚が付属する複雑な形状の器物である唐櫃の復元結果についてまとめることができたが、これについての報告を公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、古墳出土釘の発掘調査データの収集、出土釘資料の詳細な観察に基づく調書作成等を実施する。内容として、本年度と同様、簡易なデジタルマイクロスコープ実体顕微鏡等を使用して、鉄釘そのもの、および付着した木質の詳細な観察とともに、調書の作成、画像データ等の収集を行う。 また、今年度、鉄釘導入期の同様の接合金具である鉄鎹の良好な使用事例について、発掘調査現場における出土状態の観察、取り上げ直後の付着材の観察を行うことができている。次年度は、これについてクリーニング後の詳細な観察を行い、金属部分に付着する材の痕跡から木製品全体を復元する手法の有効性について検証を重ねたい。 最終年度である次年度は、本研究に係る研究成果報告を取りまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は主として、物品費を圧縮して旅費等に充当し、保管機関における作業を充実した。結果的に、物品費の圧縮による若干の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、引き続き保管機関における作業に重点を置くとともに、資料整理、データベース化等のため、本年度主として物品費の圧縮により生じた約8千円を物品費・旅費・人件費に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)