2016 Fiscal Year Research-status Report
人形芝居における儀礼の復活と門付の伝統に関する研究-淡路人形芝居を中心として
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15K03066
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
姜 竣 京都精華大学, マンガ学部, 教授 (60316867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 嚴子 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (20344583)
菊地 暁 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (80314277)
森田 良成 大阪大学, 人間科学研究科, 特任研究員 (30647318)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 門付 / 被差別 / 漂泊 / 儀礼 / 文化財指定 / 農村舞台 / 徳島県 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に研究代表者は、歴史的に人形芝居が盛んな徳島県西部の各地、とりわけ東みよし町や池田市等で、主として門付の現地調査、人形芝居の歴史や地域史に関する文献調査、市町村史(誌)並びに文化財行政関係者への関する聞き書き等を行った。それと並行して、近世以来当地に伝承されてきた三番叟廻しとエビス廻しを継承し、門付を復活させた阿波木偶箱廻し保存会(徳島市内、以下保存会)に対して複数回にわたる聞き書き調査を実施した。 地域史の理解は、人形芝居の実践形態と従事者たちの社会的かつ歴史的な動態を把握し、淡路島の人形伝統と比較する上で不可欠な前提的作業である。保存会に対しては、差別の対象でもあった人形廻しを復興させた事情について調査することで、本研究にとって重要な事柄である、漂泊の門付を現代に蘇らせることへの誇りと、被差別経験による「痛み」のかかわりを理解しようとした。併せて、研究代表者および全研究分担者、ならびに関連する科研の研究代表者が、保存会による2017年旧正月の門付に同行し、現地調査を行った。今回の廻檀先は、先祖代々人形遣いに従事した保存会の師匠が自身の地元で長年門付をしていた地域の中にあることに意義がある。 それらに加え、保存会が関わっている東みよし町法市の農村舞台の実地調査、人形師(徳島市)による人形の製作過程に関する聞き書き調査、さらに、人形芝居に関わる文化財指定の経緯と問題点に関する調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に掲げた調査項目の調査を、計画した日程に沿って実施できているから。また、進捗状況に対するそうした判断は、代表者が所属研究機関の実施する監査を受けた際に、予算の執行状況の観点から研究の実施状況が妥当であるとの評価を受けたから。
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Strategy for Future Research Activity |
阿波木偶箱廻し保存会が三番叟廻しとエビス廻しを継承し活発化させたことの意義を、具体的な動機、部落の歴史と社会状況、部落解放運動及び同和教育運動、といった様々な観点で捉えたい。そこで、彼らが創り出した新しい漂泊性について考えつつ、民俗学や文化人類学の立場で本研究の成果をまとめたい。 さらに、門付の研究を軸として、歴史学における身分的周縁論や、思想史における歓待(排除)論と連携できる学際的なテーマを構想し、本研究の発展を図りたい。
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Causes of Carryover |
主に研究分担者二名の直接経費の残額による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の出発点である先行研究者、ジェーンマリー・ロー氏、あるいは、斯界の専門家を海外から招聘し、本研究と関連する領域の海外での研究動向や新知見について意見交換を行う企画を検討したい。 また、研究成果は、学会発表、シンポジウム開催、図書の出版などのかたちで公表に取り組んでいるが、映像人類学の観点から映像記録を製作する企画を検討したい。
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Research Products
(6 results)