2017 Fiscal Year Research-status Report
災害復興過程の民俗の再構築ー中越大震災における山古志の事例からー
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15K03071
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Research Institution | The Niigata Prefectural Museum Of History |
Principal Investigator |
陳 玲 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (10373474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯島 康夫 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20313489)
池田 哲夫 新潟大学, 人文社会・教育科学系, フェロー (50313490)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 直売所・定期市 / 民俗芸能 / 水利秩序 / 住居空間 / 集落維持 / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、災害復興を「災害前の生活を取り戻す」ことではなく、「新しい生活を始める」ことと捉える。災害復興という現状のみにとらわれず、そのなかで民俗がいかに再構築されていくのかを把握し、歴史と継ぎ合わせて記述することを目的とする。具体的には、新潟県中越大震災によって壊滅的な被害を受けた長岡市山古志を対象とし、(1)直売所・定期市、(2)民俗芸能、(3)水利秩序、(4)住居空間と習俗、(5)集落維持と外部協力者コミュニティ、(6)復興過程にみる宮本常一の影響、について調査・研究を進めた。 (1)では災害後の田畑の再整理や集落の共同畑の出現などに伴って伝統野菜が意識的に作られ、その販売を目的として直売所や定期市が成立・運営されてきたこと、(2)では芸能保存団体の構成員の全員が山古志の外に転居したことにより芸能のあり方が変化したこと、(3)では田の再整理、田の養鯉池化などによる水利秩序の変容、(4)では集団移転して新築された住居が豪雪地帯平野部の住居に似た構造となり、従来行われてきた習俗が新たな住居空間において再構築されていること、(5)では集落と外部協力者コミュニティのリーダー交代による運営の変化、(6)では昭和40年代に山古志村に委託された宮本常一らによる民俗調査と提言が災害前と災害後の民俗に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。 また、平成28年9月に開催した公開ワークショップ「被災地と地域文化」の成果を受け、本年度の研究は対象地域の特徴をより明確に把握しながら進めることができた。当ワークショップは、本研究と共通性を持った科学研究費補助金基盤研究C「被災地における暮らしの再構築とその民俗的背景に関する調査研究」(研究代表者 東北学院大学 文学部教授 政岡伸洋)と共催したものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の体調不良により、とくに年度の後半から研究が進捗しなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者・分担者・協力者の各自の研究成果をとりまとめ、研究成果報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の体調不良により一部の調査が進捗せず、また研究のとりまとめを行うことができなかったため、収支状況で残が出た。今年度は残りの調査を実施、その成果を取りまとめて研究成果報告書を作成する。
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