2015 Fiscal Year Research-status Report
アジア・太平洋地域における家族司法政策と民営化の影響に関する比較研究
Project/Area Number |
15K03074
|
Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
清末 愛砂 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00432427)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅澤 彩 熊本大学, 大学院法曹養成研究科, 准教授 (90454347)
松村 歌子 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 講師 (60434875)
李 妍淑 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (90635129)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
Keywords | 家族司法政策 / 民営化 / 家庭裁判所 / 家事紛争解決 / 台湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民営化が進む家族司法政策の比較研究対象として、日本社会と文化的接点や司法上の共通点を有するアジア・太平洋地域、とりわけ台湾、シンガポール、ニュージーランドに焦点をあてている。そのため、2015年度においては、研究分担者である李と松村を中心に台湾の家族司法政策の現状について、現地で聞き取り調査を実施した(途中、研究代表者の清末も調査に加わったが、経費は所属機関の研究費を使用)。 台湾での調査を通じて、家事紛争を解決するための法制度、同制度への民間関与の状況、および民間関与のメリットとデメリット等を解明することができた。台湾の家事紛争解決に向けた司法上の取組みは、日本よりもはるかに進んでいる。また、ソーシャルワーカーの専門性や社会的地位が高い点も含め、台湾の家族司法政策から学ぶべき点は多い。 また、台湾の政策に関して、李を中心に先行研究を含む関連文献の収集を行った。主には国内の図書館やデータベースを利用したが、国内で入手困難な資料については、現地での聞き取り調査の際に裁判所、関係行政機関および関係団体から収集した。なお日本の政策に関しては、梅澤を中心に先行研究を含む関連文献の収集を行った。 その他、研究代表者・研究分担者各自が関連する研究会や所属学会の大会(2015年12月4日~6日のジェンダー法学会大会:全員、離婚実務勉強会:梅澤)等への参加を通じて見識を深めた。とりわけ、研究代表者・研究分担者全員で2016年2月10から11日に大阪大学で開催された「『家族法の場』としての『家庭裁判所』の機能を支える専門家群の養成に関する国際比較」レクチャー&セミナーに出席し、ニュージーランドの家族司法政策の詳細を学んだ。また、同レクチャー&セミナーを通じて、次年度(2016年度)に実施を予定しているニュージーランドでの聞き取り調査に必要とされる情報を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の交付申請書を提出時(2015年10月)に予定していた2015年度の研究実施計画の内容をおおむね実施することができたため、次年度の研究計画、とりわけ台湾での聞き取り調査の研究報告(2016年5月のジェンダー法学会若手研究会や2016年6月の日本女性学会の大会でのワークショップ等)、および論文執筆に向けて動きやすくなったからである。また、次年度に計画しているニュージーランドでの聞き取り調査の足掛かりとなる有益な情報(法制度上の情報を含む)を得ることもできた。 台湾での聞き取り調査の経験は、ニュージーランドでの聞き取り調査や同じく次年度に計画しているシンガポールで聞き取り調査に大いにいかすことができる。特に調査先の選定、質問項目の作成の際に参考にすることができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、シンガポールおよびニュージーランドの家族司法政策と民営化の影響につて調査をする。とりわけ、①政府および民間団体による家事紛争の当事者支援のための法制度と現状、②同制度への民間団体のかかわり、およびそのメリットとデメリット、③家事紛争の当事者支援における哲学について調査をする。両国における調査結果、および2015年度の台湾での調査結果を分析することで、日本の家事紛争解決に向けた司法政策のあり方への示唆を得るためである。 シンガポールでの聞き取り調査(9月初旬に予定)の準備は清末を中心に計画し、現地での調査は清末と李が実施する。梅澤と松村は、国内で関連する文献・資料調査を行うことで、同国の家族司法政策の課題抽出の作業にかかわる。ニュージーランドでの聞き取り調査(3月初旬に予定)の準備は、梅澤を中心に計画し、現地での調査は梅澤と清末が実施する。李と松村は、国内で関連する文献・資料調査を行うことで、同国の家族司法政策の課題抽出の作業にかかわる。 同時に梅澤を中心としながらも、研究代表者、および他の研究分担者も各々、日本の家族司法政策の課題を抽出する作業を行い、またそれらを研究代表者・研究分担者全員で共有・議論するための研究会等を開く。 2016年度に実施した台湾での聞き取り調査から得られた結果については、研究会や学会の大会で報告を行う(2016年5月14のジェンダー法学会若手研究会、および6月19日の日本女性学会大会時のワークショップ等)。その上で、年度末にこれらの研究成果の雑誌掲載を目指す。
|
Causes of Carryover |
本研究は2015年10月に採択されたため、年度の後半から研究費を使うことができるようになった。そのため、本研究費の申請段階で予定していた関連学会参加のための出張や消耗品購入等が困難であることが当初より予想された。したがって、交付申請時に2015年度は台湾調査のみを実施することにし、2016年度にシンガポールとニュージーランドで調査を実施することにした。したがって、2016年度は、両国での調査旅費(清末、李、梅澤)、関連学会への参加と成果発表のための出張旅費(研究代表者・研究分担者全員)、研究に必要な図書費や消耗品の費用(研究代表者・研究分担者全員)を使うことになるため、それに必要な額の繰り越しを行うことにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は、主にはシンガポールとニュージーランドにおける調査旅費、2015年度の研究成果を報告するための出張旅費、および関連研究会等で情報収集をするための出張旅費に用いる。また、本研究を遂行するために必要となる文献や文具等を購入する。
|