2016 Fiscal Year Research-status Report
憲法に関する継続的対話における下級裁判所と国民の機能と役割に関する基礎的研究
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15K03098
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 雅寿 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (90215731)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 対話理論 / 対話 / 継続的対話 / 対話的違憲審査 / カナダ憲法 / 日本国憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 カナダ憲法の比較検討(州裁判所・国民の機能と役割の解明)とカナダでの本調査 カナダの継続的対話における州裁判所および国民の機能と役割を、判例・学説等の分析を通して明らかにする研究を行った。具体例としては、1981年の憲法改正に関する照会事件(Re: Resolution to amend the Constitution, [1981] 1 S.C.R.753.)、1982年ケベック州の拒否権に関する照会事件(Re: Objection by Quebec to a Resolution to amend the Constitution, [1982] 2 S.C.R.793.)、1998年ケベック州の分離に関する照会事件(Reference re Secession of Quebec, [1998] 2 S.C.R.217.)等を題材として、カナダにおける憲法改正をめぐって、カナダ最高裁、州最上級裁判所、政治部門、そして、国民の意見の動向等が、相互に影響し、継続的な対話と呼べる現象が発生していることを研究した。また、平成28年9月20日から26日まで、カナダのトロント大学へ海外出張して、対話理論の専門家であるK. ローチ教授に研究の中間まとめを報告し、研究のレビューとアドバイスを受けた。 2 日本国憲法の検討(下級裁判所の機能と役割の分析) 日本国憲法の下での継続的対話における下級裁判所の機能と役割について、関連する判例と最新の学説を分析した。具体例としては、衆議院の議員定数不均衡に関する最高裁の昭和51年違憲判決(最大判昭和51・4・14民集30・3・223)は、東京高判昭和48・7・31判時709・3と有力学説の影響をうけて、参議院の議員定数不均衡に関する先例(最大判昭和39・2・5民集18・2・270)を実質的に変更し、違憲判断を出したことを研究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 カナダ憲法の比較検討(州裁判所・国民の機能と役割の解明)とカナダでの本調査 当初の予定は、カナダの継続的対話における国民の機能と役割の解明を行うことであった。実際には、憲法改正をめぐる、複数のカナダ最高裁の判断とその後の政治部門の対応をふまえて、カナダ最高裁、州最上級裁判所、政治部門、そして、国民の意見の動向等が、相互に影響し、継続的な対話と呼べる現象が発生していることの実証的研究が進んでいる。また、当初の予定通り、平成28年9月に1週間、カナダのトロント大学へ海外出張して、対話理論の専門家であるK. ローチ教授に研究の中間まとめを報告し、研究のレビューとアドバイスを受けた。 2 日本国憲法の検討(下級裁判所の機能と役割の分析) 当初の予定は、日本国憲法の下での継続的対話における下級裁判所の機能と役割について、関連する判例と最新の学説を分析することである。実際には、衆議院の議員定数不均衡に関する最高裁の昭和51年違憲判決(最大判昭和51・4・14民集30・3・223)が、東京高判昭和48・7・31判時709・3と有力学説の影響をうけていたことの実証的研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策については、当初の研究計画に従って、研究を遂行することができると考えられる。 1 カナダでの補充調査とカナダ憲法に関するまとめ 平成29度の後半には、カナダのトロント大学へ海外出張し、カナダ憲法の専門家に研究の最終まとめを報告し、アドバイスを受け、必要な補充調査を行う。それと同時に、カナダの継続的対話における州裁判所と国民の機能と役割に関する研究をまとめる。 2 日本国憲法の検討と研究成果のまとめ 平成29年度の前半は、日本の継続的対話における国民の機能と役割の分析を行う。具体的には、憲法訴訟の当事者である国民が提示した憲法理論がどのように下級裁判所と最高裁の違憲判決に取り入れられたのかを中心に分析を進める。それをふまえて、日本国憲法の下での継続的対話における下級裁判所と国民の機能と役割についてまとめ、論文を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究費に関しては、28,999円の残額が生じた。これは、経費の節減・効率的使用によって発生したものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この残額は、平成29年度の比較的早い段階で、日本国憲法の下での対話に関連する最新の図書等を購入するために使用する。
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Research Products
(3 results)