2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03103
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
渡辺 康行 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (30192818)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 最高裁裁判官研究 / 政教分離 / 信教の自由 / 審査手法 / 裁判の公開原則 / 藤田宙靖 / ムスリム捜査事件 / 白山ひめ神社事件 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は当初の実施計画とはやや異なった方向へ進んだものの、重要な研究成果を残すことができた。 まず、憲法上の権利の審査を実際に担ってきた、最高裁判所の裁判官に関する研究を行ったことは画期的な試みだと思われる。最高裁70年の歴史を、個人で回顧することはきわめて難しいため、研究組織を作り、法律時報に平成27年4月号から連載し、私は、同号に「憲法学からみた最高裁判所裁判官ー企画趣旨」、および「『適正な紛争解決』の探求と憲法裁判-藤田宙靖」を執筆した。その後、団藤重光元判事に関する論考も執筆したが公刊はまだである。この企画と並んで、泉徳治元判事に対する数度の聞き取り調査も行った。これも著書として公刊予定である。 信教の自由・政教分離などに関する審査手法に関しては、二つの論考を公表した。「宗教的性格のある行事への公人の参列等と政教分離原則」(岡田信弘ほか編『憲法の基底と憲法論』[信山社、2015年]所収)、および「『ムスリム捜査事件』の憲法学的考察」(松井茂記ほか編『自由の法理』[成文堂、2015年]所収)である。これらによって、政教分離規定適合性審査を、「かかわり合い」の審査と、「かかわり合いの正当化審査」に分節化するなど、これまで公表してきた私見をさらに敷衍することができたと考えている。 また、裁判上の権利救済を客観法的に担保する「裁判の公開原則」について、共著で「『傍聴人に聞こえない証人尋問』国家賠償請求事件」(法学セミナー2015年11月号)を公表した。その他、この1年の判例動向、学界動向を回顧する文章を、それぞれ『重要判例解説』『公法研究』に執筆した。この作業も、判例・学説の最新動向を自分の手で確認する機会となり、有益だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
執筆依頼や、新たな研究観点の獲得などによって、当初の研究計画とは考察の角度を若干異にすることになったが、最終的には研究テーマに関わってくる業績をほぼ順調に公表してきたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、これまでの研究成果を中間的に集約するために著作化したい、と考えている。予定しているのは、思想・良心の自由、信教の自由・政教分離原則関係の論文集、憲法上の権利に関する共著の体系書、および上記した泉元最高裁判事の聞き取り記録である。それらを進めるとともに、徐々に、裁判所や権利救済の手法についても研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
534円という額に適合する支出ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍購入に充てる。
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