2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03103
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
渡辺 康行 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (30192818)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 三段階審査 / 制度形成の統制 / 泉徳治 / 団藤重光 / 平等審査の手法 / 憲法判例と家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、これまでの研究を著作の形で公刊することができた。まず、渡辺康行・宍戸常寿・松本和彦・工藤達朗『憲法Ⅰ 基本権』(日本評論社)である。同書は、従来の人権論の体系書とはまったく異なり、保護領域・制約・正当化という三段階審査の枠組みによって、憲法上の権利にかかわる判例状況を整理し、さらに三段階審査が当てはまらない立法者の制度形成に依存する権利にかかわっても、立法裁量を枠付けるための審査手法を探ったものである。新時代の体系書として、学会誌「公法研究」の学界展望欄で異例な形で取り上げられるなど、大きな注目を集めた。 また憲法判断の担い手である裁判官に関する研究として、泉徳治・渡辺康行・山元一・新村とわ『一歩前へ出る司法』(日本評論社)を公刊した。最高裁の司法行政部門・裁判部門双方に精通した泉徳治氏へのインタビューを著作にまとめたものである。判決形成の裏側を垣間見ることができる著作であり、これまでの判例の読み方に別の視点を提供するものとして、高く評価された。一般紙を含めて既に数多くの書評がだされていることは、それを裏付けるものである。 裁判官研究としては、「『リベラルなタカ』―団藤重光」も公表した。戦後刑事法学の巨匠である団藤の、最高裁判事時代の活動について分析したものである。 最高裁判例の分析として、「憲法判例のなかの家族ー尊属殺重罰規定違憲判決と婚外子相続分規定違憲決定」がある。憲法判例のなかに現れた裁判所・裁判官の家族観を分析しようとしたものである。その他、この1年の判例動向、学界動向を回顧する文章を執筆する機会を得ていることも、有益だった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、『憲法Ⅰ 基本権』という著作を公刊したことによって、憲法上の権利の体系構築のための重要な基礎を築くことができた。またそれと並んで、憲法上の権利の救済の仕方を構想するため、その担い手である裁判官研究に従事してきたが、その面でも『一歩前へ出る司法』を公刊できたことにより、かなり大きな進展があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題の第一は、『憲法Ⅰ 基本権』で一応の体系を構築した憲法上の権利について、より深い考察を加えていくことである。第二は、憲法上の権利救済にかかわる判例・学説の状況を分析し、新たな体系を構想することである。第三は、救済の担い手である裁判所や裁判官についても、さらに研究を進めることによって、地に足がついた憲法理論を提唱することである。 それぞれの課題について、研究論文を公表することにより責任を果たしたい。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた人件費などに支出がなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月28日(金)に、秋田大学の若手教員を招聘して研究会を行い、旅費、宿泊費、謝金として使用する。
|