2016 Fiscal Year Research-status Report
最適課税論の動向を反映した租税体系をめぐる基礎的研究
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15K03119
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
渕 圭吾 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (90302645)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 租税法 / 財産権保障 / 憲法 / 再分配 / 時間 / 租税法律主義 / 遡及立法 / 証拠排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,租税法以外の分野の研究者との意見交換を通じて,租税体系のあり方について洞察を深めることができた。 具体的には,第一に,租税制度の設計にあたり,実体法の制度設計が手続法,特に,税制を執行するに必要な情報の国家等による取得の可否,に制約される,という観点を獲得することができた。この点については,前年度の本科研費以外の研究の中から着想を得ていたところであったが,今年度,科研費を利用した研究において大きくその観点を展開することができた。以上については,特に同僚の刑事訴訟法研究者との対話(及びそこから派生して読むこととなった様々な文献)から多くを学んだと言ってよい。 第二に,とりわけ憲法の観点から,最適課税論をはじめとする経済学の理論に則った課税が制約を受けるかもしれないこと,また,憲法によって一定の租税制度の設計が要請される可能性がある可能性について考察を深めることができた。これは特に同僚の憲法学者の示唆によるところが大きい。この考察を発展させて,憲法と租税制度の相克について,一つには財産権保障との関係,また,もう一つには租税立法と時間の関係を素材として論文を公刊することができた。 総じて,当初計画していた経済学者の書いた文献を読んでそれをそのまま租税法学に投入するというプランよりも,もう少し綿密な作戦を取る必要が明らかになったが,そのような作戦をまずまず順調に実行できているといえそうである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画・方法とは若干異なるが,経済学で言われていることを法学の枠組みの中で消化する方向性を見出せた。また,今後の研究論文で主張したい内容も明確になってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
経済学の文献を読むことに過度にこだわることなく,とりわけ歴史研究や他の法分野の研究を消化することを通じて,あるべき租税制度・租税体系について規範的なことを述べられるように努めていきたい。
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Causes of Carryover |
研究の方向性についての若干の見直しに伴い,図書の購入及び研究集会出席のための出張の回数が当初想定より少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては,研究方針の確立及び研究の進展に伴って購入すべき図書のジャンルも広くまた研究集会への出席も複数予定されているので,これらに対して適切に使用することを予定している。
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Research Products
(6 results)