2017 Fiscal Year Research-status Report
最適課税論の動向を反映した租税体系をめぐる基礎的研究
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15K03119
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
渕 圭吾 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (90302645)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際課税 / 租税条約 / 租税史 / 国際租税法 / BEPS / 外国税額控除 / 地方税 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,第1に,経済学における最適課税論の成果を踏まえた上で,特に国際課税の分野に特化して,論文を執筆し,また,研究を進めた。 すなわち,まず,租税法学会第45回総会で行った報告(これ自体は,2016年度の成果である)を踏まえて,「国際租税法の潮流」という論文を執筆し,租税法研究45号に公表した。また,日本評論社から出版された「現代租税法講座第4巻国際課税」に「歴史的文脈の中の外国税額控除」という論文を掲載した。両者は,いずれも「個人の包括的所得に対する課税は必然か,他にも選択肢がありうるのではないか」という本研究課題の問題意識から,とりわけイギリスにおける所得課税に対する独特の考え方およびそれの国際課税における反映に着目して,執筆したものである。さらに,中里実ほか編『BEPSとグローバル経済活動』(有斐閣)にて租税競争をめぐるOECD/G20の報告書を分析した。そこでは,租税競争という国家間の競争を環境や金融規制等をめぐる競争と同様に捉えることができるか,また,国家間の「競争法」を観念することができるか,といったことを考えることができた。この点については,本研究課題とは別のある研究会で報告を行い,私としては研究の方が的アイデアを得ることができた。 本年度は第2に,比較的若い世代の有力な研究者2名(専門分野は,租税法と経済史・経営史)及び中堅ないし長老級の租税法研究者の助力を得て,本研究課題に関するワークショップを開催することができた。このワークショップでは,租税法および租税史の最先端の研究内容につき,本研究課題を踏まえて報告していただき,租税法研究者3名からの有益なコメントを得ることができた。もちろん,私自身も積極的に議論に参加し,本研究課題(および今後の私の研究)に対する示唆を得ることができた。 この他に,本研究課題の遂行の過程で地方税・地方自治等に関する論文も執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「最適課税論」から出発した本研究課題であったが,個人に対する包括的所得課税以外の諸相というように問題を捉えた直したことにより,研究が大きく進展した。多岐にわたる分野について,何本もの論文を執筆することができた。もっとも,欲を言えば,分量的にもう少し長大な論文を執筆したかった。このため,(1)ではなく(2)という自己評価にとどめる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度が最終年度にあたる。今後も,本年度と同じような研究スタイルで論文執筆を進める他,できれば,海外の大学で研究発表を行いたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた洋書の出版が遅れていること等を理由として,次年度使用額が生じている。必要な書籍の購入,研究集会への出席のための旅費として適切に使用することを考えている。
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Research Products
(5 results)