2015 Fiscal Year Research-status Report
事業者間取引における不公正取引と経済法:欧州における法規制との比較
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15K03156
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
和久井 理子 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 特任教授 (50326245)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 独占禁止法 / 支配的地位の濫用 / 優越的地位の濫用 / 不公正取引 / 英国 / EU / 公共調達 / 公契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度においては,EU及び英国並びにオーストラリアについて食品分野における事業者間不公正取引にかかる規制の状況について調査した。さらに,この問題を理解し分析する上での前提となるEU競争上の「支配的地位」の概念について調査し,研究結果を論文として公表した。米国についても同様の観点から食品分野において競争効果分析がどのように行われるかを調査・検討し,関連する事例について研究会で報告した。また,これら調査結果を踏まえ示唆を得つつ,日本における優越的地位濫用規制についての理論的考察を行い,この結果を共著論文として公刊するとともに,研究会において報告を行った。 公共調達分野における不公正取引の規制のあり方を検討し,EU及び英国(イングランド及びスコットランド)における状況をEU不公正取引指令,これを国内法化する英国・スコットランド法令及び最低生活賃金の公契約における採用状況についての研究論文をまとめた。 競争法ないし事業者間取引規制上の不公正取引規制を検討する上では,そもそも事業者とは何であるのかの検討が必要となる。この課題について示唆的なEU競争法上の労働者と事業者の境界ないし労働者概念について関連する欧州裁判所判決について研究報告し結果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度中に予定したことは,ほぼ行うことができ,加えて当初予定しなかった支配的地位及び労働者・事業者概念についても射程を広げて研究を行うことができた。また,とくに公共調達分野におけるEU法及び欧州加盟国法における公正性確保については,関連する法令の解析にとどまらず英国を中心とした実態調査を行ったり,加盟国法化の状況を英国,ドイツ,フランス及びこれらの国の自治体についてもある程度調査するなど広がりと厚みのある研究を実施することができた。他方で,英国の食料雑貨品分野における綱領審判官制度に関しては,同制度の運用面で目立った進展が平成27年度中の相当な期間内にみられなかったため,論文執筆・公表等を行うには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に大きな変更はない。平成27年度の研究調査成果を踏まえて欧州・英国における公共調達指令等の法令及び公契約条例に関する論文を年度内に公表する。日本における公契約条例制定の動き,建設分野における不公正取引の状況,下請法・優越的地位濫用規制の状況は継続して観察する。英国の食料雑貨品分野における綱領審判官制度の運用状況を観察し,まとまって論文にする動きがみられた段階で論文として公表する。昨年度研究中に,日本独禁法における自由競争減殺概念について,判断基準・方法,なかでも競争効果分析のあり方について検討する必要性を認識し,あわせてこの課題を検討する上でEU競争法及び加盟国競争法上の「目的による制限」概念から示唆を得ることができるのではないかという着想を得た。平成28年度中にこの観点からの調査を行い,この着想の適切性・妥当性について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
英国に出張して同国内・大学法学図書館で文献調査を実施することにより書籍・資料費(物品費)を大幅に削減することができた。大学から支給された研究費も平成27年度は潤沢であったため,この費用を使って書籍等購入を行うことができた。他方で,平成28年度はこのような外国での調査を行うことが比較的難しくなること及び大学から支給される研究費がなくなることが予想されたことから,次年度使用用に残しておくこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は主として物品費(書籍・資料購入費)として用いる予定である。
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Research Products
(8 results)