2015 Fiscal Year Research-status Report
科学技術の発達と社会の発展による環境・エコ犯罪に関する調査研究
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15K03181
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
竹村 典良 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (60257425)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 化学物質汚染 / 蜂群崩壊症候群 / 農薬 / 海洋環境汚染 / 海洋浮遊プラスティックごみ / 海洋生物 / 生態系 / 人間の健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学物質汚染に関する調査研究を実施した。 第一に、「蜂群崩壊症候群による生態系の破壊」に関する調査研究によって、下記のような研究結果が得られた。ミツバチと他の受粉媒介者は世界中で未曽有の規模で死滅している。まずフランスで、次に米国と他の地域で、成虫のミツバチが巣箱を捨て去り、コロニーが崩壊した。米国でこのような被害が生じた2年後、それは「蜂群崩壊症候群」(Colony Collapse Disorder)と名づけられた。大部分の科学者は、「CCDは単一の原因から生じるのではない」ということで意見が一致している。むしろ、近年の生息数の減少は、複数の要因が結合して引き起こされ、崩壊に至ったとする。主要な原因は、栄養摂取のストレス、病原菌、農薬である。 第二に、「海洋浮遊プラスティックごみによる海洋環境汚染」に関する調査研究によって、下記のような研究結果が得られた。プラスティックごみによる海洋環境の汚染の規模はきわめて広範囲に及ぶ。プラごみは極地域から赤道まで世界中のあらゆる海洋に浮遊している。海洋環境に向かう固体ごみは海洋ごみと呼ばれる。 海洋ごみは、多数の海洋動物や海鳥がそれにからまれ、あるいは餌と間違えて食することによって、怪我を負わせ、命を奪う。それらには、海鳥、ウミガメ、アザラシ、トド、クジラ、魚類など、多様な種類の生物が含まれる。また、プラスチックごみが化学物質や外来生物を運搬する機能については十分に理解されていないが、それは海洋生物、生態系、人間の健康に潜在的脅威となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究実施計画は、「化学物質汚染に関する調査研究を行う。」ということであり、その2つの柱である「蜂群崩壊症候群による生態系の破壊」と「海洋浮遊プラスティックごみによる海洋環境汚染」に関する調査研究は、予定通り順調に調査研究が行われた。 前者は主として各種文献資料により、当初予想していた以上に農薬の使用による汚染が深刻であることが明らかになった。また、農産物の増産のための遺伝子組み換え作物の増加とも関連する問題であることが明らかになり、遺伝子組み換え作物の生産の是非についての調査研究が今後の課題として残された。 また、後者は各種文献資料から得られた情報に基づき、世界の海洋における5つの浮遊ごみの集積地の1つの中心である南太平洋の島々の現地調査を行った。とりわけ、絶海の孤島とされるイースター島でも海洋浮遊・海岸漂着ごみによる環境破壊が観察され、また、現地におけるごみ処理の特殊事情(島内における処理能力の限界によるチリ本土への移送)も加わり、多大な問題を抱えていることが発見された。さらに、南太平洋における海洋浮遊プラごみによる環境破壊はインド洋にも及んでおり、今後さらなる調査研究が必要であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、原子力発電所等から排出される核ゴミの管理と処分に関する調査研究を行う。フィンランド、スウェーデン、フランス、ドイツ、米国など、諸外国における地層処分をめぐる議論ならびに処分場の決定・建設等について調査並びに分析し、わが国における核のごみ処理のあり方について具体的な提案を行う。 平成29年度は、開発による環境破壊と健康被害に関する調査研究を行う。アラル海、チャド湖ほかにおける開発による環境破壊と健康被害の実態について調査研究し、自然と人間の関係はどうあるべきかについて考察し、具体的な行動計画を提案する。 平成30年度は、気候変動・地球温暖化と人間の活動の関係に関する調査研究を行う。気候変動・地球温暖化に対する国家や企業の対応がネガティブなフィードバック・ループを生み出し、さらなる環境の悪化と安全な環境で生活する基本的な人権に脅威をもたらしている状況について調査研究し、今後どのような方向に進むべきか、具体的な政策提案をする。
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Research Products
(4 results)