2016 Fiscal Year Research-status Report
科学技術の発達と社会の発展による環境・エコ犯罪に関する調査研究
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15K03181
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
竹村 典良 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (60257425)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 核ゴミ / 放射性廃棄物 / 地層処分 / 複雑性 / 不確実性 / 世代間正義 |
Outline of Annual Research Achievements |
核ゴミの管理と処分に関する調査研究を行った。 第一に、高レベル放射性核廃棄物は極めて危険で、永続的かつ安全に貯蔵できる施設は世界に存在しない。2015年11月、30年以上の努力を経て、フィンランド政府は世界で初めてそのような貯蔵施設である「深層地層処分」(deep underground depository)の建設を認可した。現在、スウェーデン政府は同様の施設をフォースマークに建設する許可を検討中である。フランスでは、アンドラ(核廃棄物処理機関)が2017年にビュールに同様の施設を建設する許可を申請する予定である。 第二に、現在、大部分の国々は放射性廃棄物を地層処分せずに一時的な貯蔵施設に貯蔵している。ドイツでは、数十年にわたってゴアレーベンでの塩層処分が検討されてきたが、2000年に政府が中止を決定した。米国では、1987年にネバダ州のユッカマウンテンを処分地として決定したが、2010年に政府が計画を撤回した。日本、英国、カナダでは、各国政府が深層地層処分施設の建設計画を明言しているが、場所の選定に苦悩している。 第三に、核専門家の間では、「核廃棄物は地層処分により安全に処理できる」という国際的なコンセンサスがあるが、数十年間努力が重ねられてきたにもかかわらず、高レベル放射性廃棄物の地層処分の許可が得られているのは世界で1カ所だけである。地層処分の長期的な過程の予測に関する技術的な問題とそれに伴う不確実性は、現在ならびに将来における難問としてあり続けるであろう。高レベル放射性廃棄物の地層処分には解決困難な問題が多数存在する。現在、最新かつ最大規模の実験が勧められているが、地層処分には本質的に不確実性が伴い、将来、絶対に放射能が環境に放出されないという保証はない。「複雑性」と「不確実性」が地層処分の重要問題として指摘され、今後も議論が続くであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第一に、平成27年度の「化学物質に関する調査研究」について、「蜂群崩壊症候群から見る生態系の破壊」および「海洋浮遊プラスチックごみによる海洋環境汚染」に関する調査研究を行った。とりわけ、後者に関して、南太平洋の海流旋回地(gyre)の中央に位置するラパ・ヌイ島(チリ)の現地調査において、絶海の孤島にも漂流プラごみが大量に漂着し、貴重な環境を破壊していることが明らかになった。廃棄プラスチックが波や紫外線でマイクロプラスチックに分解され、食物連鎖を通じて生態系、人間の健康に対する脅威となっていることが明らかになった。 第二に、平成28年度の「核ゴミの管理と処分に関する調査研究」について、国際セミナーへの参加と複数の核ゴミ地層処分実験施設を訪問し、最前線の現状と対策について調査研究をすることができた。前者として、平成28年5月25日から27日にフィンランドのトゥルクで放射性核廃棄物の地層処分に関する国際セミナー(DOPAS 2016 Seminar)が開催され、参加者として最前線の技術、諸問題、将来展望について学ぶ機会が得られた。また、セミナーの最終日にはオルキルオトにある世界で初めて許可が下りた地層処分施設であるオンカロ施設を参観し、現場を見学することができた。後者として、平成28年8~9月にオスカーシャム(スウェーデン)にあるSKB(スウェーデン核廃棄物処理会社)のエスペ岩盤実験施設、ビュール(フランス)にあるアンドラ(フランス核廃棄物処理会社)のミューズ・オトマーン・センター(高レベル放射性廃棄物地層処分場)、マンシュ(フランス)にあるマンシュ貯蔵センター(低レベル放射性廃棄物処分場)をそれぞれ訪れ、現場担当者の案内で施設を見学し、スタッフにインタビューし、多数の資料を収集することができた。最前線における緊張した状況を体感することができ、臨場感を伴う調査研究ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、「開発による環境破壊と健康被害に関する調査研究」を行う。開発による環境破壊と健康被害は世界中で生じており、これまでの自然と人間の関係のあり方が問題視されている。近年、リチウムはIT機器のエネルギー革命の素材として需要増が著しいが、世界の埋蔵量の70%を占めるウユニ湖(ボリビア)およびその周辺の環境破壊の脅威となっている。ボリビア政府は、リチウムの掘削、加工、製品化などの産業化に力を入れているが、その計画は環境問題についての認識に欠けている。掘削、加工等に伴う水不足、その既存農業への影響、湖沼の干ばつ、化学物質注入による環境汚染、生態系の破壊などが発生しており、リチウム政策は現地の人々の生存権を侵害するおそれがある。ウユニ湖およびその周辺における開発による環境破壊と健康被害の実態について調査分析し(上記理由により、当初予定のアラル海からウユニ湖に対象を変更)、自然と人間の関係についてどうあるべきか考察し、具体的な行動計画を提案する。 平成30年度は、「気候変動・地球温暖化対策から生じる逆説的危害に関する調査研究」を行う。気候変動と地球温暖化は人類に対して多数かつ重要な問題を提示している。水や食料のような環境資源をめぐる紛争、気候変動に起因する移住に関係する紛争、資源利用をめぐる紛争、国境を超える汚染の移動をめぐる紛争など。各国政府や地域社会が気候変動に対する解決策を捜し求め、地球温暖化の効果を減じ、それに順応するための方策を採用しているが、これらがネガティブなフィードバック・ループを生み出し、さらなる環境の悪化と基本的人権に対する付加的な脅威をもたらす。気候変動・地球温暖化対策から生じる逆説的危害について調査分析し、今後どのような方向に進むべきかを考察し、具体的な行動計画を作成する。
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Research Products
(3 results)