2016 Fiscal Year Research-status Report
米国厳罰政策の転換がわが国の少年司法に及ぼす影響に関する研究
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15K03184
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山口 直也 立命館大学, 法務研究科, 教授 (20298392)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子どもの法定年齢 / 少年法適用年齢 / 脳科学 / 比較少年法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 本年度は、(1)子どもの法定年齢に関する比較法研究、(2)少年司法制度の比較法研究の2つについて重点的に研究を行った。
2 (1)は、現在、わが国において進行中である「未成年者の法定年齢の引き下げ」の議論にかかわる研究である。本研究においては、少年法の適用年齢(刑事裁判所移送年齢を含む)にとどまらず、公法(選挙権年齢、被選挙権年齢、飲酒・喫煙許可年齢等)、民事法(契約年齢、医療同意年齢、親権対象年齢、婚姻許可年齢等)の領域も併せた総合的な法定年齢研究であり、当該領域の研究者との共同研究も行った。その成果については、山口直也編著『子どもの法定年齢の比較法研究』として出版(2017年2月)した。山口自身は該書において「米国における少年法適用年齢及び刑事裁判所移送年齢の意義」を執筆し、脳科学の進展により、米国における少年法定期用年齢がむしろ引き上げの方向にあることを明らかにした。
3 (2)は日米英加豪独仏瑞韓9カ国の少年法制について、それぞれの国の少年法研究専門家とともに共同で研究を行ったものである。本研究においては、各国の少年法の歴史・理念、少年法の担い手、少年の権利保障(適正手続保障)、被害者の関与等について分析を行い、その成果を、山口直也編著『新時代の比較少年法』として出版(2017年3月)した。山口自身は該書において「米国少年司法の史的展開と現代的意義」を執筆し、米国少年法性の誕生から、少年法制の草創・展開期、厳罰主義期への変遷、そして、近年の脳科学の進歩を背景とした脱・厳罰主義期へ推移を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度中に山口直也編著として本研究課題にかかわる2冊の研究書を出版するなど、研究は当該の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、脳科学者、社会学者、心理学者とともに、少年司法領域において脳科学が与え得影響について共同研究を継続している。特に、わが国において、少年法適用年齢を現在の20歳から18歳に引き下げること、すなわち18歳から成人として刑罰を科すことが妥当な否かを、少年の生物学的・心理学的成長の観点から検討を行い、平成29年度中には一定の研究成果として公表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度の主要研究成果である山口直也編著の2冊の研究書(各60冊)を出版社から購入したうえで本邦の少年法研究者に配布し、広く研究成果として周知しようと計画していましたが、両書の出版が年度末となり、研究費の執行が年度またぎとなるおそれが生じました。それゆえ、研究費執行を明確化するために、処理を平成29年度に一括して行うこととし、平成28年度研究費の一部を平成29年度へ繰り越すこととしました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度の研究費が執行可能となった段階で可及的に速やかに、出版社である成文堂から購入したうえで、少年法研究者に配布する予定です。
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