2018 Fiscal Year Research-status Report
農業協同組合法の改正論点についての研究:規制改革会議で提起された論点を中心にして
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15K03188
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
多木 誠一郎 小樽商科大学, 商学部, 教授 (50324364)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 協同組合 / 農協 / 非営利 / 協同 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度に引き続き組合員制度について考察した。具体的には平成29年度とは異なり、農業者組合員である正組合員を取り上げた。農業協同組合法制定当時と異なり現在では大規模農業者から零細農業者まで、正組合員の規模は区々である。にもかかわらず組合員に対する奉仕目的やその根底にある平等・公正・連帯をはじめとする協同組合の価値を拠り所として、伝統的には規模にかかわらず組合員は形式的に等しく取り扱われてきた。 私見では、そもそも奉仕目的や協同組合の価値が法的にどのような意味を持つのかについて、わが国では詳しく論じられたことはない。そこでドイツで近時主張されている見解を参考にして上記意味について考察した。考察の結果協同組合において、伝統的な意味での上記協同組合の価値(それゆえ同価値に基礎を置く伝統的な意味での奉仕目的)は協同組合が必ず備えていなければならない要素とはいえないことを明らかにした。このような考え方に基づくと、組合員の最も重要な自益権であり、新たに捉え直した奉仕目的に合致した組合事業利用権をより柔軟に設計することも可能になり、組合員の規模(例えば協同組合との取引の状況)に応じた取扱いも協同組合の価値に適合する形で可能になる。 新たな個別協同組合法の立法に向けた動きが急になってきたため、当初考察を予定していた汎用的(一般的)協同組合法を真正面から考察することは差し控えた。これに代えて、本研究課題の直接の対象である農業協同組合法について実際界が主張する「組合員助成のみならず、より広く地域社会へ貢献を目的とする組合」という考え方について考察した。わが国では汎用的協同組合法は、地域社会への貢献と関連して考察されることも多いことを考慮したためでもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般に入手可能な資料を渉猟した上で、①農業協同組合中央会の廃止及びそれに伴う中央会監査の廃止、②組織再編、③組合員制度及び④(実際界における立法の動きを踏まえて新たに採用した)地域社会への貢献を目的とする組合、といった論点について考察し、その結果を毎年度公表してきた点を踏まえ、上記区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を設定するきっかけであり、副題にも示した規制改革会議(現在は規制改革推進会議)の提言を嚆矢とする農協改革集中推進期間が令和元年6月に一段落する。その際この間の総括がなされ、進捗状況や残された課題が示されると推測しうる。実際界における進展も考慮しながら、研究最終年度の取りまとめを行う。 これまで主として①中央会の廃止及びそれに伴う中央会監査の廃止、②組合から株式会社への組織変更、③組合員、④地域社会への貢献を目的とする組合を取り上げて考察してきた。このうち解決が先延ばしされていることもあり実際界での関心も高く、協同組合法理論に照らしても論じるべき重要な点が残されているのが、私見では上記③④である。とりわけ上記④について、実際界は積極的姿勢であるが、協同組合法理論に照らすとこのような組合はどのように評価できるのかについて考察する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、次の二つの理由による。一つは、2018年度に公刊が予定されていた海外の協同組合(法)関連図書の公刊がずれ込んでいるためである。もう一つは、科研費で予定していた用務にかかる出張を、できるだけまとめて遂行することによって、出張回数を減らすことができたためである。 この次年度使用額は、2019年度に公刊予定の上記図書をはじめとする図書の購入と研究遂行のための出張に充てる予定である。
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