2019 Fiscal Year Research-status Report
農業協同組合法の改正論点についての研究:規制改革会議で提起された論点を中心にして
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15K03188
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
多木 誠一郎 小樽商科大学, 商学部, 教授 (50324364)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 協同組合 / 農協 / 非営利 / 協同 |
Outline of Annual Research Achievements |
農協改革集中推進期間が2019年6月に終了する際に予測された新たな議論が低調に終わった。それゆえこの議論を前提とした考察はしなかった。このような中で次の2点を主として取り上げて考察した。 一つは、協同組合と「地域」の関係についてである。昨年度からの継続である。協同組合は本来地域社会において成立するものであるからか、とりわけここ数年実際界では協同組合による地域貢献に積極的姿勢を取っている。これに対して学術界も考察の対象とし、地域社会への貢献を協同組合の特質と結び付けて論じているものも多い。国際協同組合同盟の採択した協同組合原則第7原則にも謳われているからであろう。しかし同貢献は、ドイツ協同組合法に関する議論から示唆を得て、少なくとも協同組合の基本的特質との関係は希薄であるという結論に至った もう一つは、経営管理委員会制度である。同制度は、1996年農業協同組合法改正によっていわば鳴り物入りで導入された。同制度は既存の理事会制度との選択制であるが、制度間競争で完敗し、全組合の僅か6.5%の利用にとどまっている。(1)住専問題の後始末という導入経過からも垣間見られるように、本来の制度趣旨が曖昧であり、(2)経営管理委員会制度はその目指すところであるモニタリング・モデルとしては不徹底であり、(3)同委員会を設置しても監事を存置しなければならない、といった問題点を指摘した。その上で(4)同委員会による調査のあり方、(5)同委員会制度における監事監査の特徴を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一般に入手可能な資料を渉猟した上で、(1)農業協同組合中央会の廃止及びそれに伴う中央会監査の廃止、(2)組織再編、(3)組合員制度、(4)地域社会への貢献を目的とする組合、(5)ガバナンスのあり方、といった論点について考察し、その結果を毎年度公表してきた点までは順調に進展しているといってよい。 しかしながら農協改革集中推進期間が2019年6月に終了する際に予測された新たな議論が低調に終わった。それゆえこの議論を前提とした考察をしなかった点を考慮に入れて、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
いわゆる5年後見直し条項にいう、改正法施行日から5年後が2021年3月末である。正組合員・准組合員による組合事業の利用の状況や改革の実施状況についての調査の結果がこの日に向けて出揃う。これを受けて、より実態に即した新たな議論が展開されるものと推測される。このような実際界の状況をも考慮に入れながら、研究最終年度の取りまとめを行う。 上記展開が活発になされず、新たな視点からする研究によってこれまでの研究成果に厚みを増すことが困難な場合には、農業協同組合法改正に倣って同趣旨の改正が2018年末になされた水産業協同組合法にかかる次の事項を取り上げる。例えば(1)両法の改正内容に差異があるのか、(2)差異がある場合にはどのような理由によるものか、(3)農業・農村・農業者と漁業・漁村・漁業者の異同を考慮した場合に、改正内容の異同をどのように評価できるのか、についてである。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは次の二つの理由による。一つは、2019年度末に予定していた出張がコロナ事態のため遂行できなかったためである。もう一つは、科研費で予定していた用務にかかる出張を、他の用務とできるだけまとめて経済的に遂行することによって出張回数を減らすことができたためである。 繰り越した次年度使用額は、2020年度に公刊予定の図書の購入費、研究遂行のための出張費、仮想空間における遠隔研究会参加に必要となる機材購入費等に充てる予定である。
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