2021 Fiscal Year Research-status Report
農業協同組合法の改正論点についての研究:規制改革会議で提起された論点を中心にして
Project/Area Number |
15K03188
|
Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
多木 誠一郎 小樽商科大学, 商学部, 教授 (50324364)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 協同組合法 / 非営利法人法 / 非営利組織法 / 農協 / 漁協 / 会社法 / 非営利法人 / 非営利組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)農協協同組合・同連合会(以下、「組合」と総称する)におけるガバナンスの一翼を担う経営管理委員会制度について考察し、その結果を2020年度に口頭で報告していた。その内容を研究論文にまとめて公表した(下記〔雑誌論文〕の欄の一つ目-三つめ)。研究内容については2020年度実施状況報告書をご参照下さい。 (2)農業協同組合法改正に倣って同趣旨の改正が水産業協同組合法について2018年末になされた。両法改正の異同について考察し、その結果を口頭で発表した(下記〔学会発表〕の欄)。 (3)2015年農業協同組合法改正では、組織再編の手段の一つとして組合から株式会社に法形態を変更する途が開かれた。同変更に対するニーズはないようである。しかし将来的には、同改正を推進した規制改革会議が答申したように、組合の一部について同変更を強制する法改正がなされる可能性もある。強制か否かは関係なく、法形態を変更した場合に当該株式会社を実質的(経済的)意義における協同組合として設計することを試みた。このような試みはわが国の学術界・実際界双方で細々となされてきたが、本研究が既存の試みと異なるのは、――実際の設計においては制約を設けるものの――いわば協同組合的株式会社においても株主たる地位の譲渡性そのものを認めることを出発点としている点である。このような協同組合には理論上、経済効率の点で種々の利点があることが報告されていることを考慮したためである。経済学分野の研究者と共同で考察し、実質的意義における協同組合として設計することの可能性と限界を明らかにした(下記〔雑誌論文〕の欄の四つ目・五つめ)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度実施状況報告書に記した通り、個別の論点について考察し、その結果を毎年度公表してきた点までは順調に進展しているといってよい。 いわゆる5年後見直し条項に基づく農業協同組合法改正が「規制改革実施計画(2021年6月18日閣議決定)」に記されなかったこともあり、同法の改正論点についての議論は低調であった。このような事情を予想して、同論点について考察する際に比較の視座に置いて研究に厚みをつけるために予備的に取り上げるとしていた2018年水産業協同組合法改正について考察したうえで、口頭で報告したが、論文にまとめることはできなかった。 上記諸事情を考慮に入れて、「やや遅れている」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
次の二つの事項に取り組む。一つは、2018年水産業協同組合法改正についての上記報告内容を論文にまとめることである。 もう一つは、2015年農業協同組合法改正のいわば陰の主役である准組合員による組合事業利用の制限という論点について、新たな対応を試みる興味深い考え方に2022年3月に接した。そこで、同論点について考察した結果を既に論文に記しているが、この考え方に対する私見を加筆する。 上記二つの研究成果を盛り込んで農業協同組合法改正の特徴・問題点を浮き彫りにしたうえで、研究最終年度の取りまとめをする。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは2021年度に予定していた研究発表のための出張がコロナ禍の中で遂行できなかったためである。 出張を再開できるようになるのかどうか不確かなこともあり、繰り越した額は2022年度に公刊予定の図書の購入費に充てる予定である。
|