2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03207
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
洪 済植 島根大学, 法務研究科, 教授 (10382590)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 親子会社の法的規制 / 企業開示 / 取締役会の機能 / 取締役会のあり方 / 取締役の権限 / 取締役の役割 / 社外取締役の機能とその問題点 / 独立取締役の導入およびその問題点 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では、本研究課題(基盤研究(C)・15K03207)に係る研究について、次のような成果を上げることができた。第1に、学術論文として、「取締役会制度に関する沿革的考察」(『島大法学』第59巻第1号1-39頁(2015年))を公表した。本稿のねらいは,取締役会制度に関する沿革的考察を通じて、取締役会の機能やそのあり方について提言することにある。この目的を達成するため、日本における株式会社の取締役・取締役会制度の史的変遷についての分析を行った。その次に、取締役会の機能とその問題点について検討するために,既存の経営管理システムの設計構造として採用されている監査役会設置会社および指名委員会等設置会社,ならびに,平成26年度改正会社法により創設された監査等委員会設置会社の取締役会の監査・監督機能を比較したうえで,その機能を強化するための一方策として導入された社外取締役制度の現状とその問題点について検討し、今後の取締役会のあり方について提言を行った。 第2に、上記の学術論文を論証するべく、その関連研究として、「取締役会の決議を経ない取引行為について取締役の会社に対する責任が認められた事例――名古屋地判平27・6・30金判1474号32頁――」について批判的な観点から評釈を行い、その研究成果を公表した(『金融商事判例』2016年5月15日号に掲載される予定)。本稿は、株式会社の取締役が取締役会決議を経ずに、または、稟議手続を行わずに業務委託契約を締結し、会社の財産を不正に流出させたことにつき、「法令および内規に違反した」ことを根拠にして取締役としての任務懈怠ないし不法行為に基づく損害賠償請求のいずれも認定した上記の下級審判決を分析検討し、取締役会の機能やそのあり方について実証したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の意義は、親会社の利益侵害行為との相互関係における会社法上の問題点に着目し、子会社経営に関与する親会社の利益侵害行為から少数派株主及び債権者の利益をいかに保護すべきかを具体に明らかにすることにある。 本研究課題は、株式会社の利害関係者の財産的利益を侵害する行為につき、取締役等の利益侵害行為と親会社の利益侵害行為とに場合分けして比較検討を行うことにより、少数派株主及び債権者の保護法理として今後会社法が果たすべき役割を提言することにあるが、平成27年度に公表した学術研究論文を通じて取締役等の利益侵害行為を規制するための取締役会の機能およびそのあり方について提言できたことが評価できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後行う研究推進方向として、平成28年度では、日本における親会社の利益侵害行為の実態及び企業開示制度に関する文献を収集して検討するとともに、それに関連する学術研究成果を発表する予定である。
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Research Products
(5 results)