2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03214
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松原 弘信 熊本大学, 大学院法曹養成研究科, 教授 (20190499)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 当事者適格概念 / 事件(実体)適格 / 訴訟追行権 / 理論的基礎 / 当事者適格概念不用説 / 当事者適格概念併用説 |
Outline of Annual Research Achievements |
・執筆依頼のあった「共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者と遺産確認の訴えの当事者適格・最高裁平成26年2月14日第2小法廷判決・民集68巻2号113頁)についての判例評論を私法判例リマークス51号(2015年〔下〕)116頁-119頁(法律時報社)に掲載するとともに、その成果を昨年5月22日の福岡民事訴訟法判例研究会において報告した。 ・科研の研究テーマである「当事者適格の理論的基礎の研究」の第一弾として、母法国たるドイツの「正当な当事者」概念にはないわが国特有の「正当な当事者」概念たる当事者適格概念について、ドイツの「正当な当事者」概念たる事件(実体)適格および訴訟追行権の形成とその理論的基礎を踏まえて、ドイツのそうした概念をめぐる学説継受後にどのようにして当事者適格概念が形成されたか、その理論的基礎はいかなるものであったかを考察した。それを踏まえて、近時ドイツの訴訟追行権概念と事件適格概念のみで十分であ り、当事者適格概念は不要であるとする少数有力説たる当事者適格概念不要説(松本博之 説)について批判的に検討し、通説たる訴訟追行権概念と当事者適格概念の併用を認める当事者適格概念塀用説を支持するとともに、わが国において当事者適格概念が一般に用いられている理由を含む当事者適格の意義について研究した。そして、その研究成果を「当 事者適格概念の形成と意義ーー当事者 適格の理論的基礎(1)」という報告テーマで今 年の3月5日(土)の民事手続研究会〔九州〕において九州大学研究会室で報告するとともに、それを同じ題名で論文にする作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・できれば今年度中に論文を1つ書き上げ公表したかったが、論文の脱稿が今年度に入っ てから連休明けの5月9日(月)になり脱稿し(26172字)、大変歴史のある著名な民事法学系の法学雑誌である民商法雑誌に投稿したものの、論文の公表まであと半年程度かからざるをえなくなった。そのことは、当初の計画からするとやや遅れており、残念である。 ・その1つの要因は、昨年度熊本大学大学院法曹養成研究科の副研究科長と教務委員長を兼任することになり、しかも、今年度から同研究科の研究科長になることが昨年度末に決まる中で大学行政の仕事の比重が予想以上に大きかった点にある。もう一つの要因は、科研費の研究計画を実際に実施するにあたり、当事者適格の理論的基礎の研究をどのように考察の対象を区分けし具体的な論文の題目として結実させる形で考察するかを最終的に決めるのに相当の時間を要した。 ・しかし、後者の点について熟考の結果、上述のように、第1弾として、「当事者適格概念の形成と意義――当事者適格の理論的基礎(1)」について書き上げることにし、当初の予定よりも遅れながらも今年5月初旬には脱稿するに至り、あとは校正を経て論文を公表するだけであり、その目途がたった。そして、第2弾として「固有適格・訴訟担当の概念枠組みの形成と意義――当事者適格の理論的基礎の研究(2)」という題で、来年の5月末締切の高橋宏志古稀記念論文集を執筆することにし、それに向けて論文の構想をある程度具体化できるに至った。したがって、今年度中に論文について研究会で報告するとともに、論文のほとんどを書き上げる目途がたったということができよう。
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Strategy for Future Research Activity |
・当事者適格の理論的基礎の研究の第1弾である「当事者適格概念の形成と意義――当事者適格の理論的基礎(1)」について、5月9日に脱稿および民商法雑誌に投稿したので、査読の結果、雑誌掲載が決まれば校正のうえ今年中に公表したい。 ・当事者適格の理論的基礎の研究の第2弾である「固有適格・訴訟担当の概念枠組みの形 成と意義――当事者適格の理論的基礎の研究(2)」について、高橋宏志古稀祝賀記念論文集(有斐閣)に締切期限の来年5月末までに脱稿すべく今年中に民事手続研究会〔九州〕で報告したい。具体的には、まずドイツの通説的概念枠組(事件適格・訴訟担当な いし訴訟適格の概念枠組み)およびそれを学説継受しつつわが国においてそれを修正する形で形成された通説的概念枠組みについて考察し、その後、わが国において福永有利博士により提唱され有力化していく固有適格概念と、当事者能力を有する法人でない社団の当事者適格の基礎をめぐって通説化していく固有適格・訴訟担当概念枠組みがわが 国においてどのように形成されていったか、その理論的基礎は何かを検討し、かつ、上記概念枠組みをめぐる問題状況を明らかにしたい。そのうえで、当事者能力を有する法人でない社団の当事者適格をめぐる判例・学説を検討する中で、固有適格・訴訟担当概念枠組みの問題点を明らかにしたうえで、それに代わる概念枠組みの再構成を試み、新たな問題設定ないし概念枠組を提示したい。 ・今年度中に次に書く予定の論文構想たる当事者適格の理論的基礎の第三弾についても、 具体化したい。今のところ会社内部訴訟および検察官を被告とする人事訴訟における当事者適格理論について、再審当事者適格との関係をも視野に入れ具体化していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
・3月にもドイツのケルン大学に出張して旅費の申請とドイツ語文献の購入・コピーを予定していた。 ・だが、今年4月からの法科大学院の次期研究科長が内定し、その仕事や副研究科長・教務委員長の仕事に追われて出張できなくなり、外国主張用の旅費が使えなくなるとともに、ドイツ語文献の購入ができなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・熊本地震が発生し、研究科長としての仕事が増えているなかで、ドイツのケルン大学への出張は難しいように思われる。 ・今年度のドイツ語文献を中心とした外国語文献を精力的に購入して研究に役立てていきたいと考えている。
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