2016 Fiscal Year Research-status Report
アジア主義と大正デモクラシー:新人会・無産政党のアジア観を中心に
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15K03259
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中島 岳志 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40447040)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 無産政党 / アジア主義 / 超国家主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
大正期から昭和初期にかけての無産政党関係者のアジア認識について、一次資料の収集に努めた。宮崎龍介については、ご子息の協力を得て、資料調査を行った。また、熊本県荒尾市の宮崎兄弟資料館においても、引き続き資料収集を行った。ここで見えてきたのは、宮崎龍介の革新主義とアジア主義の密着した関係だった。父・滔天からの影響や孫文との交流などによって、若き日から中国の近代化へのシンパシーを抱いていた。これに加えて、東京帝大の新人会時代にブルジョア(中産階級)によるプロレタリア(無産階級)への抑圧を告発を繰り返したことから、中華民国のリーダーたちを封建体制打破の同志と見なし、連帯意識を強めていった。彼のアジア主義は「国内の封建制」と「国際社会における帝国主義」の打破という革新的志向性によって構成された連帯のヴィジョンだった。 しかし、1930年代後半になると、その言説がアジアに対する帝国主義的要素を帯びるようになる。宮崎は中野正剛が率いる東方会に所属し、政治活動を活発化させたが、この時期の発言には、覇権主義的なアジア主義が多く見られる。そのため、研究調査の範囲を東方会に広げ、中野正剛関係の一次資料の収集・分析にもつとめた。幸い、現在所属する東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の同僚の中野民夫教授は、中野正剛の孫であるため、同氏の協力を得て研究を進めることができている。 上記テーマと連動する形で『親鸞と日本主義』(新潮新書、2017年8月刊行予定)を書き上げた。また『リーディングス:戦後日本の思想水脈第7巻-保守』を編集し、詳細な解説を書いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果の公表に向けて、順調に資料を収集することができている。北海道大学から東京工業大学に移動したことにより、国会図書館などへのアクセスが格段によくなったことで、資料収集が容易になった。 一方で、勤務先の変更により担当授業の大幅な変更があったため、その準備で時間を消費し、多少の研究への影響が生じた。ただ、大きな進捗の遅延にはつながっておらず、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究成果の公表に向けて、収集した資料のまとめを行っていく。従来のアジア主義研究で等閑視されてきた無産政党関係者のアジア認識を明らかにすることで、アジア主義研究の新たな地平を開きたい。
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Causes of Carryover |
北海道大学から東京工業大学へ移動したため、資料収集のための上京費用(飛行機での移動費や宿泊費)が必要なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定よりも収集すべき資料が多く、当初の予定以上に物品費や人件費が必要となる見込みのため、次年度使用に回した資金を充てることとする。
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Research Products
(3 results)