2015 Fiscal Year Research-status Report
過疎地域における「生活」をめぐるガバナンス-日独地域比較研究
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15K03261
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
大黒 太郎 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (20332546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
魚住 弘久 熊本大学, 社会文化科学研究科, 教授 (60305894)
東原 正明 福岡大学, 法学部, 准教授 (00433417)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 過疎 / 地域の雇用 / 原発事故と避難 / 女性農業者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域における人々の日々の暮らしを支える諸制度のうち、特に「雇用」に関わる「ガバナンス」を、日独墺の国際比較の視点から明らかにしようとするもので、とりわけ、各国の小規模自治体を対象に、実証研究を行うものである。 平成27年度は、日本における小規模自治体の課題である「過疎問題」について、特に人々の暮らし(雇用、農業、交通、行政等)に注目しながら、1960年代から2000年代までの50年にわたって、学術的にいかに論じられてきたのかを、5つの専門ジャーナル雑誌のレビューとしてまとめた(大黒・魚住・東原「過疎」問題はどのように論じられてきたのか(3)」『熊本法学』第134号、2015)。さらには、研究を担当する3名がそれぞれ1本ずつ、それぞれの関心に沿って、日本と墺太利における地域の「雇用」と「暮らし」に関する論文を、雇用に関する専門雑誌『雇用構築学研究所ニューズレター』に発表した。 上記の成果を得るにあたっては、研究担当全員が集まる研究会を4回実施し、論文の進捗状況の確認と論文の相互読み合わせと討論を行って、研究と論文の質を高めるピアレビューを行った。 本研究はフィールドワークをその不可欠の要素としており、大黒・松野を中心に、福島県内あぶくま地域の出身で、現在福島第一原発事故による避難生活を送る女性農業者を訪ね歩き、震災前後の「雇用」と「働き方」「日常生活」の変化についてのインタビュー調査等を実施した。 「研究会」「論文執筆」「フィールドワーク」を組み合わせ、研究初年度としての基礎を築くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究にとって重要な意味を持つ小規模自治体の「雇用」ガバナンスについて、日独墺の対応の比較を行うにあたり、日本においては、「過疎」の問題をどうとらえるのかを明らかにすることが重要であり、日本の「過疎」問題の歴史的展開を独墺の同時代史と比較することを目指している。平成27年度は、「過疎はいかに論じられたのか」という論文の成果に現れているように、日本の過疎問題の歴史的変遷を追う作業は当初の想定以上に進んだが、他方で、それを独墺と比較するための研究、とりわけフィールドワークが、本来予定していたにも関わらず、相手方との連携がうまくいかずに実現しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
「過疎はいかに論じられたのか」、に関する論文は、想定よりも規模が大きく、かつ包括的な論文に発展しつつあるので、平成28年度の初旬にはその完成を目指したい。また、平成27年度に、研究担当者3名がそれぞれの関心に従って執筆した各国における雇用関係の論文については、さらに発展させる。 また、ドイツ・オーストリアへのフィールドワークについては、研究の中間年度である平成28年度に実施できるよう準備を進める。ドイツについては、元東ドイツ地域ハレ市に近い小規模自治体でのフィールドワークを予定している。オーストリアにおいても、同様の地域を選定し、フィールドワークを実現したい。 福島県内あぶくま地域の女性農業者のインタビュー調査については、引き続き規模を順次拡大しながら行うとともに、「農業」と「食」によって女性の「雇用」をいかに実現するのかについて、歴史的経緯をまとめたい。 以上の目的を達成するため、研究会は、平成27年度同様、年3~4回のペースで実施する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、海外でのフィールドワーク調査が実施できず、翌年度にその実施を繰り延べたことが主な理由である。 海外フィールドワークの実施を翌年度に変更したのに伴い、本来年2回程度の予定であった研究会を4回実施したので、当初予定よりも国内旅費を多く利用することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には、ドイツ・オーストリアでの海外フィールドワークを実施予定である。
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