2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03313
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森井 裕一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00284935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仙石 学 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 教授 (30289508)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 財政規律 / 連邦制度改革 / 欧州化 / 政策の相互参照 / 緊縮政策 / ドイツ / ポーランド / EU |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度得られた知見を基礎として、ドイツとポーランドにおける財政規律ルールの制度化とそれに付随する政治過程の分析を継続した。ドイツでは連邦制度改革という大前提が存在した上で財政規律条項が憲法に導入されたが、この政治過程では、主要政党の選好はほぼ一致しており、原則において争われることは少なかったことが明らかとなった。経済学者の中にはケインジアン的理論を背景として異を唱える著名な研究者もいたが、制度形成に当たって大きな影響を与えることはなかった。州レベルでの議論は積み上がった財政赤字の解消へ向けての議論は多いものの、人口構成や産業構造の変化などに対応しながらも財政規律を遵守する方向へ向けての議論は早期に収斂していたことが分かった。 ポーランドにおいては、体制移行後の制度改革とEU加盟に向けた圧力が財政規律条項の憲法への導入の前提となっていた。しかし、規定導入後の初期には経済状況は好ましくなく、民主左派同盟政権の取り組みは挫折することとなった。これはEU加盟にかかる行政コストが増加したことと、政権内部での財政規律をめぐる対立があったためである。その後の市民プラットフォーム政権でも財政規律の強化は試みられたが、改革のコストを押しつけられた若年層の反対により試みは成功しなかった。ポーランドの政治過程を見ると、財政規律は目標としては合意されても実際の政治過程により実施は困難になっていったことが明らかとなり、「法と正義」政権ではさらにEUレベルの規律ルールを弱める動きが見られる。 上記のように今年度はドイツ、ポーランドそれぞれの政策過程の展開に重点を置き研究を進めた。 2017年1月には北海道大学において公開の「財政規律の形成と政策移転・欧州化」研究会を実施し、これまでの成果を発表し、関連領域の専門家と意見交換を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年末のベルリンでのテロをはじめとして今年度も突発的に不安定な政治状況があり、インタビュー調査などは実現できなかったが、議会資料、政府公表データ、文献資料の分析については順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き文献調査と分析を進める。財政規律の実施過程で立法や政策アドバイスを行った専門家や政治家からの意見交換、聞き取り調査を実施し、研究成果の公刊に向けて準備を行う。
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Causes of Carryover |
聞き取り調査予定者との日程調整が困難であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
政治状況の安定化を見て、適宜旅費を使用する。
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