2016 Fiscal Year Research-status Report
EU統合下における労働市場の多様性と多国籍企業の相互関係に関する研究
Project/Area Number |
15K03424
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
安藤 研一 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40232095)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経済政策 / 経済事情 / 欧州経済統合 / 多国籍企業 / Brexit / 移民労働者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,EUにおける市場・通貨統合にもかかわらず,加盟各国の雇用・失業状況に大きな差異があることに着目し,そうした状況と多国籍企業の関係を分析することを主要な課題としている.多国籍企業は,より有利な立地場所を求めて容易にその活動拠点を動かしうるからであり,時に環境・労働法制の弱体化,所謂「底辺への競争」を強いるものと批判されているからである. 平成28年度には,前年度に整備した研究基盤,即ち,既存文献の収集整理と関連データの整理,データベース化を基に,研究を進めた.同時に,EUを巡る大きな情勢の変化,即ち,イギリスの国民投票によるEUからの離脱決定,Brexitを受けて,研究の方向性の調整も行った.というのも,イギリス国民投票の結果には,行き過ぎたリージョナリゼーションとそれに起因する格差の拡大,多国籍企業によるオフショアリング,リロケーションに伴う軋轢や移民労働者問題があったからである. 新たな状況も視野に取込みながら研究を進め,平成28年11月には第28回European Association for Evolutionary Political Economy Conferenceにおいて,BrexitがEUにもたらす意義に関する研究報告を行った.更に,年度はまたぐことになったが,平成29年4月6~8日の第44回Academy of International Business (UK & Ireland Chapter) Conferenceにおいて,EU域内における多国籍企業のリストラが雇用,特に,失業に及ぼす影響についての研究報告を行なった.どちらの学会報告でも,良好な評価・コメントを受けることが出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) Brexitという新たな状況がEUにおいて生じたことは,研究当初の計画においては想定していない事態であったが,そのこと自体がEU統合下における雇用問題と密接に関係しているため,計画の調整が必要であった.しかし,そうした調整を通じて研究課題がより明確になり,国際学会での研究報告を行うことが出来た.そして,その際のコメントも好意的なものであった. 研究2年目として予定していたことは,概ね実施することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に引き続きデータの整理・分析を進めながら,平成28年度の学会報告での質問・コメントに応える形で報告原稿を書き改めていく.更に,イギリスのEUからの離脱交渉が始まるが,EUを巡るそのような新たな動きが,多国籍企業に及ぼす影響を考慮しながら,研究を進めていく. 平成29年度には,イギリスのEU離脱を巡る新たに状況について,イギリスのみならず,EU機関が集まるベルギー・ブリュッセルでのヒアリング調査を行うとともに,内外の学会,研究会での報告を行う予定である.加えて,ある程度研究成果が見えてきたものについては,学会誌を含む研究専門雑誌への投稿を考えている.同時に,研究最終年度である平成30年度に総まとめが出来るよう,研究の大枠を確定していく予定である.
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Causes of Carryover |
当初,当該年度(平成28年度)に行った研究を基礎に,国際学会での報告を予定していた.2017年12月にオーストリアで開催されたEuropean International Business Academy (EIBA)での研究報告に応募したが,Poster Sessionでの報告しか認められなかったために,報告を断念した.その際のレフェリーのコメントをもとに,さらに研究を改善した.その上で,別の国際学会,Academy of International Business (UK & Ireland Chapter,AIB-UKI)に応募し,Competitive Sessionでの報告を認められた.しかし,この学会の開催が次年度(平成29年度)初頭のため,当該年度の助成金を翌年度に繰り越し,研究報告旅費に充てることとした.そのため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由により生じた次年度使用額は,平成29年度の助成金と合わせて2018年4月6日から8日に開催される国際学会,AIB-UKIでの研究報告のための旅費として使用する.
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Research Products
(5 results)