2017 Fiscal Year Research-status Report
日本の新卒労働市場に関する実証分析-就職活動時期の変遷と早期化の問題点
Project/Area Number |
15K03434
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木村 寛子 (奥平寛子) 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (80550954)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 新卒労働市場 / サーチ活動 / 人的資本投資 / 就職 / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
大学生の就職活動の早期化を受け、政府の主導により、採用面接の開始時期を大幅に繰り下げる取り組みが続いている。ところが、こうした取り組みが本当に大学生の人的資本の蓄積や効率的なマッチングの形成にとって効果的なのかは必ずしも自明ではない。本研究は、4年間の計画を前提に、就職活動の早期化が与えた影響を数量的に明らかにするものである。
これまで研究では、「学校基本調査」(文部科学省)調査票データおよび「学生生活に関する実態調査」(大学生協組合)をもとに、プログラムインテンシティによる差分の差推定を行い、就職活動の時期が後ろ倒しされることの影響を検証した。分析の結果、以下の点が明らかになった。第一に、倫理憲章の改訂は実際に就職活動時期を2か月弱ほど後ろ倒しした。これは、リクナビなどの情報サイトが登録日を延長したためと考えられる。第二に、早期化が解消されたとしても、3年生の人的資本投資(大学の登校日数や読書時間数)は改善しないことが明らかにされた。むしろ、2年生は大学登校日数を減らすという興味深い結果も得られた。これは、3年生後期に就職活動で忙しくなるため、2年生の間にできるだけ単位を多く取ろうとしていた学生が、倫理憲章の改訂によって3年生後期にも単位を取ることができると考えたためと考えられる。つまり、就職活動時期の後ろ倒しは人的資本に投資するタイミングを後ろ倒しさせた。第三に、倫理憲章の改訂により、就職率が上昇した。これは、学生のサーチ行動が変化したことを示唆する。
得られた結果は既にディスカッションペーパーとしてまとめて公表したが、なぜ後ろ倒しによって就職率が上昇するのか、という背景のメカニズムは不明のままであった。3年目の研究は、引き続き成果をセミナーや学会で報告するとともに、発展的研究を行うために共同研究の可能性などについて模索した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目に引き続き、国内外のセミナーや学会で成果を報告した。この分野で権威ある学会の2017年大会において、本研究をまとめたポスターにポスター賞が授与された (Society of Labor Economists 22nd Meeting, Raleigh, USA, May 2017)。そのため、上記のような評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き、これまでの研究で明らかにされた後ろ倒しの影響について、学生や企業の求職採用行動の観点からメカニズムの解明を目指す。
|
Remarks |
Poster Award, Society of Labor Economists 22nd Meeting, Raleigh, USA, May 2017.
|
Research Products
(5 results)