2015 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアとフィリピンの都市化、中高等教育拡充と世帯間消費支出格差の分析
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15K03458
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
宮田 幸子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (10646764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋田 隆裕 立教大学, 経営学部, 教授 (50175791)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中高等教育拡充 / 所得格差 / 教育の収益率 / インドネシア / 家計調査データ |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度の目的は、先行研究の整理と最新の家計データを入手しデータを整え、分析を始めることであり、概ね目的は達成された。社会経済家計調査データ(SUSENAS)の最新版は、コード化されて管理されており、コード・変数と質問表の対応リストも全てドネシア語である。そのためインドネシアの統計局を訪問し、調査担当者やデータの使用経験のある研究者らの協力を得ながら、データの入手及びデータを英語で理解できる形式に整える作業を行った。データ変数の翻訳と主な変数定義の確認を現地と行いつつ、分析できる形式にクリーニングを行い、主要な部分の分析を始められる環境が整った。その整理した家計データ2012年を用いて、インドネシアにおける家計消費支出格差と教育の収益率について, 農村と都市, ジェンダー別、セクターや業種別でどのように異なるかについて、様々な側面から分析した。これまでの先行研究の結果と比較しつつ、SUSENAS2012年における教育の収益率を推計した。その結果、都市と農村、男女別でかなり異なる収益率となることが明らかとなった。また従事する業種により求められる教育水準が異なり得るため、就労者を従事している業種別に分けたところ、その産業構造が都市と農村および男女でかなり異なることが明らかとなった。またSUSENAS(1997年~2011年)の時系列データ(一部)に基づき消費支出における教育の役割を、様々な分解分析手法を用いて分析した。この研究では、まずインドネシアを都市と農村地域に分け、Gini係数により都市農村間と都市内・農村内の教育格差分析を行った。その結果、農村部における初等教育の拡充は、農村内の教育格差を縮小させたのみならず、都市農村間の教育格差も縮小させているたことが分かった。さらに他2手法(Blinder-Oaxaca分解等)を用いて分析を行い、教育格差が都市農村間消費支出格差の主な要因であること等が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、先行研究の整理とインドネシアにおけるこれまでの政策経緯などを把握するため、教育や所得格差に関する最新の報告書や統計が揃う国際金融機関 (世界銀行、アジア開発銀行、アジア経済研究所)、や国際研究所などのホームページや研究代表者・協力者が所属する大学が契約している研究論文などの検索システム(EBSCOhost、JSTOR、Science Direct、その他)を用いて、中高等教育拡充政策と世帯間消費格差に関する最新の資料と学術的な文献の収集を行った。 インドネシアに関しては、研究分担者が主にこれまで蓄積してきた長期間の全国社会経済家計調査データ(SUSENAS)を用いて、高等教育拡充政策下における消費支出格差推移の分析を行った。教育拡充と消費支出格差の分析結果は、国際会議で発表しワーキングペーパーとして公表している。その修正バージョンを、査読付き国際学術雑誌 ”Social Indicators Research” に投稿し、既に受理されている。 また、SUSENAS2012年による分析の成果は、Economics Research Seminar Series 2015年度 (立命館大学経済学研究科, 滋賀県草津市, 2016年1月実施) において報告し、セミナー参加者から今後の分析を進める上で有益なコメントが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度以降は、前年度に引き続き世界銀行などの国際機関刊行物や学術雑誌より中高等教育拡充と世帯間消費支出格差に関する最新の資料と学術的文献を収集する。インドネシアの国家開発計画長(Bappenas)とフィリピンの国家経済開発局(NEDA)や教育政策を扱う省庁などを訪問し、都市政策、教育拡充関連政策、貧困・格差是正政策などに関する最新の資料と文献の収集を行う。 実証分析については、昨年度基本的な分析結果が得られた教育の収益率にについて、セミナー発表などで得られたコメントを反映しさらに分析を進め、論文としてまとめ、学会などで公表する予定である。 さらなる実証分析としては、都市農村間格差に焦点を当て、1990年代以降の長期的な家計調査データを用いてAkita and iyata (2013)が開発した階層型格差要因分析手法とTang and Petrie (2009) が開発した非階層型格差要因分析手法により、総世帯間格差の要因分析を行う予定である。なおデータの状況や資料収集の進捗によって、分析対象トピックを若干修正し、結果をまとめられるように対応する予定である。結果を論文にまとめ、国内外のセミナー、学会にて公表する。さらにワーキングペーパーなどで公表し、学術雑誌へ投稿する。
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Causes of Carryover |
27年度中にフィリピンでの資料・データ収集を予定していたが、予定を変更し、インドネシア研究に集中することになったため、フィリピンの部分の海外出張費がかからなくなった。そのため、海外出張費が未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度中に、インドネシアでの資料・データ収集に加えて、フィリピンの国家経済開発局や統計局での資料・データ収集を計画している。また、外付けハードディスクやUSBドライブなどの消耗品の購入も予定している。
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Research Products
(5 results)