2015 Fiscal Year Research-status Report
日本の金融市場における投資部門別の戦略の切り替え・切り替え頻度の実証分析
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15K03559
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 竜市 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (50721958)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 戦略の切り替え |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、投資家の資産価格予測がいくつもの戦略から選ばれる形で形成され、選ぶ戦略を時間を通じて変えるという「戦略の切り替え」に関する実証研究である。戦略を切り替えている投資家の属性を実証的に特定し、その切り替えは株価変動と関連性があることを実証する。これらを実証的に解明することは、バブル・暴落などの金融資産価格変動の原因を解明した行動ファイナンス理論に実証的妥当性を与える目的がある。本研究で金融市場のリスクの原因を学術的に解明することから投資家のみならず金融市場安定化政策を立てる政策立案者に対して金融市場におけるリスクマネジメントを行う際の重要な情報を提供できると考える。東京証券取引所が発行している「投資部門別の売買状況」のデータを用い本研究を行っている。分析している投資家のタイプは1)海外投資家、2)証券会社、3)投資信託、4)事業法人、5)生・損保、6)都銀・地銀、7)信託銀行である。検証した戦略はファンダメンタル戦略とトレンドフォロイング戦略である。ファンダメンタル戦略とは、企業の純利益や配当金などの代理変数で測られる企業の根源的価値の周りを株価は推移すると予測する戦略であり、トレンドフォロイング戦略とは過去の価格情報をもとに期待を形成する戦略である。 実証分析の結果、信託銀行は二つの戦略を用い切り替えており、その戦略が価格に有意な影響を与えていることがわかった。また外国人投資家はトレンドフォロイング戦略を用い、価格にインパクトがある取引を行っていることがわかった。この事実は外国人投資家が短期的に起こるバブルや暴落を引き起こし、さらには助長している可能性を示している。よって市場を安定させるには外国人の資産取引に何らかの規制を置く必要があるかもしれないことを示している。 本年度論文を書き上げReview of Financeという一流ファイナンス雑誌へすでに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では平成28年度末に論文を書き上げ投稿するという予定であったが、予定より一年早く研究が遂行された。また研究計画では日経ニーズが販売している日経225採用の個別銘柄の価格データを用いテクニカル戦略の切替えが、切替えない場合と比べると高い投資利益をもたらすことを示す、という研究を平成29年度行う予定であったが、既に実証分析し論文を書き上げQuantitative Financeという雑誌に投稿、掲載が決定された。このように作業が予定より早く進んだ理由は以下のとおりである。第一に科研費を使い大型PC(ワークステーション)を購入しデータ分析を短時間で終わらすことができたことが一番大きな理由と考える。また科研費により出張し、一流経済学者と議論することができたのも一つの理由と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画であるが、機関投資家の投資戦略と価格インパクトの推計を引き続き研究していきたいと思っている。例えば機関投資家の株式保有の要因分析、特に機関投資家はどの情報(マクロニュース、決算発表、証券アナリストの予測情報など)をみて取引するかを投資家タイプ別に分析したい。また価格インパクトの計測も投資家タイプ別に行いたい。価格インパクトの計測をタイプ別に行うことは誰が情報トレーダーかを特定することであり、情報トレーダーの取引が価格を動かすというマーケットマイクロストラクチャーにおける重要な結論を実証的に分析する意味がある。この研究アイディアは本年度の科研費を受けた研究から自然と出てきたアイディアであり、既に株式保有に関する価格インパクトに関する既存研究のサーベイを行い始めた。それと同時にその研究を行うため科研費を使いトムソンロイターのデータベース使用権(半年分)を既に購入した。
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Causes of Carryover |
今後の研究計画にも述べたが、次年度以降も機関投資家の投資戦略と価格インパクトの推計を引き続き研究していきたいと思っている。この研究を行うためには株式保有のデータを使用する必要があり、科研費を使いトムソンロイターのデータベース使用権(半年分)を既に購入した。次年度その研究おこなうためには引き続きデータベース使用権を購入する必要がある。データベース使用権は半年でも高額なため少しでも繰り越したいと思い13514円を次年度へ残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の研究計画を遂行するために株式保有のデータを使用する必要があり、科研費を使い引き続きトムソンロイターのデータベース使用権を購入する必要がある。また仕上げた研究成果を国際会議(international conference on computating economics and financeなど)で発表する予定である。次年度の助成金とともに次年度への繰越額をそのために使用したいと考えている。
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