2017 Fiscal Year Research-status Report
近世近代地方商人の経営と地域経済構造-宮城県村田町を事例に-
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15K03566
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
岩田 浩太郎 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (30184881)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経済史 / 近世史 / 近代史 / 東北 / 商人 / 経営 / 地域社会 / 重要伝統的建造物群保存地区 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書の「平成29年度の研究実施計画」に記載したように、第3年度は「(3)明治期の村田商人群の経営展開及び関係構造に関する研究」を主に実施した。幕末維新から産業革命期に至る村田商人群の経営変化とその背景となった全国経済構造の変動について考察を進めた。 まず、村田商人群の各家に残る店卸帳など総括帳簿の調査と分析をおこない、各家の資産構成の検討から、地主と金融(有価証券投資を含む)に比重を置くタイプ、地主化せず専ら商業に比重を置くタイプ、両者の中間的なタイプなど様々な経営類型が存在したことがあきらかになった。いずれの類型においても紅花から養蚕製糸業及び綿紡績業への展開とその中継商業が背景となったが、各類型は金貸しや有価証券投資を媒介に相互に関係し合い、また殖産組など村田商人群による互助組織も結成して助け合い、ともに発展する動向がみられた。製糸業の全国的競争のなかで村田製糸株式会社の失敗という事態はみられたが、仙南地方の中核都市の一つとして商業金融機能を保持し、店蔵が立ち並ぶ景観も形成された経緯があきらかとなった。 また、村田商人群と関係した周辺地域のなかで大河原町・柴田町・白石市の旧家の近世近代文書の調査もあらたに開始することができた。 総じて、幕藩制期からの蓄積を基盤に近代化に対応した経営変化をはかり、村田商人群が地方名望家層として殖産興業などに役割を果たし貧民救済も実施しながら地域統合を進めた歴史的経緯をあきらかにできた。同時に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された村田町の「蔵の町並み」形成の歴史過程もほぼ解明できた。 なお、平成28年度に進めた「(2)幕藩期の村田商人群の経営展開及び関係構造に関する研究」も継続し、関係構造に関する論文と上方=中央市場との商品取引に関する個別実証をおこなった論文を発表できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の申請以前から、また本研究開始後においてさらに、研究対象地の諸旧家や自治体と関係づくりを進めていたため、平成29年度の計画もおおむね遅滞なく進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】に記したように、現地との関係づくりが良好に進展しているので、平成30年度も順調に研究を推進できると思われる。
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Research Products
(6 results)