2016 Fiscal Year Research-status Report
同族中小企業における経営の移転と財務パフォーマンスの関係性
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15K03632
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
中井 透 京都産業大学, 経営学部, 教授 (50237202)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中小企業 / 同族企業 / 事業承継 / 財務 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中小企業の中でも所有と経営が一致するような同族企業に焦点を当て、「財産および経営の承継」である事業承継の中でも特に「経営の承継」、つまり経営権と実務執行の移転問題を考察の対象とする。その上で、従来関心が寄せられてこなかった、経営の移転と企業業績をはじめとする様々な財務パフォーマンスとの関係性を明らかにしようとするものである。これにより、わが国中小企業の多くを占める同族企業の事業承継における財務管理機能の役割と課題を抽出し、企業を継続的に発展させるための要因と望ましい姿を明らかにすることを目的としている。 本年度においても引き続き、所有と経営が一致する同族企業の経営権および実務執行の移転と、それにともなう財務パフォーマンスとの関係性について、理論的側面からの検討を加えてきた。具体的にはわが国および欧米の先行研究をレビューするとともに、スタンフォード大学及びサンタクララ大学を訪問して資料の収集に努めるとともに、それぞれの大学関係者と経営の移転や事業承継について意見交換を行った。特にサンタクララ大学においては同校経営大学院マネジメント部門のM.L. Correia氏とシリコンバレー地区のスタートアップ企業に関する経営の移転問題について意見交換を行い、同族企業を考察する上で有意義な示唆を得ることができた。 こうした作業を通じて情報の収集は進んできているものの、本来これらの過程を通じて行うべき理論的枠組みの構築や仮説の設定などが十分に行えておらず、29年度において集中的に実施しなければならない課題となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度~26年度の研究課題「中小企業の継続性とオーナーシップマネジメントに関する財務論的研究」(基盤研究(C)24530430)の研究成果として平成27年度中に論文「Corporate Succession and Performance in Japanese Small and Medium Enterprises」を発表し、この内容についての意見交換を通して本研究の問題意識の更なる精緻化を行ってきた。また、並行する形で、所有と経営が一致する同族企業の経営権および実務執行の移転と、それにともなう財務パフォーマンスとの関係性について、わが国および欧米の先行研究をレビューする中で、事業承継と企業業績の関係性を説明するための方法論として相応しいモデルの抽出を試みてきた。 しかしながら、当初予定していた仮設構築と検証のためのインタビュー調査、中小企業支援団体との交流を深めた上での実態把握などについては、十分に実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は平成28年度に実施できなかった理論的枠組みの構築と、仮説設定を行って、その検証を目的とした実地調査を行う。加えて、小規模同族企業や事業承継によって経営権と実務執行が移転された企業、または移転を予定している企業に対しても、必要に応じてインタビュー調査を行っていく。 こうした過程で、設定された仮説の見直しを行いながら、定量分析の実施に向けた変数の定義と分析手法の絞り込みを行っていく。これらの作業と並行する形で、同族企業(Family Business)研究が進んでいるアメリカの研究者との意見交換を行うことで、新しい研究の方向性、分析視角を取り入れていくことを考えている。そのための海外出張を計画している。
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Causes of Carryover |
米国カリフォルニア州への実地調査を行ったものの、予定していた国内でのヒアリング、インタビュー調査などが十分に行えなかったため、予算計上していた旅費に次年度繰越が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に実施するインタビュー調査の内容とそれにともなう訪問先などを早急に決定し、効果的な国内出張を計画することで適切に旅費を使用する予定である。
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