2017 Fiscal Year Research-status Report
同族中小企業における経営の移転と財務パフォーマンスの関係性
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15K03632
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
中井 透 京都産業大学, 経営学部, 教授 (50237202)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中小企業 / 事業承継 / M&A |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中小企業の中でも所有と経営が一致するような同族企業に焦点を当て、「財産および経営の承継」である事業承継の中でも特に「経営の承継」、つまり経営権と実務執行の移転問題を考察の対象とする。その上で、従来関心が寄せられてこなかった、経営の移転と企業業績をはじめとする様々な財務パフォーマンスとの関係性を明らかにしようとするものである。これにより、わが国中小企業の多くを占める同族企業の事業承継における財務管理機能の役割と課題を抽出し、企業を継続的に発展させるための要因と望ましい姿を明らかにすることを目的としている。 平成29年度は、事業承継における選択肢として近年中小企業でも頻繁に実施されるようになってきたM&A(企業の合併・買収)に焦点を当て、その交渉プロセスと買収価格決定のための企業価値評価に「財産の承継」および「経営の承継」がどの程度影響するかについての考察を行った。 その成果の一部として、石油学会情報誌「ペトロテック」2017年8月号に掲載された「中小企業のM&Aの現状と期待」で安藝修氏(中小企業基盤整備機構)、佐々木真佑氏(日本政策金融公庫)らと座談会を行っている。また、中小企業研究に欠かせない知見を有している両氏とは情報交換を継続しており、平成30年度以降に計画している事業承継研究の新しい発展形での研究を遂行する上で必要なデータ提供を受けることも視野に入れている。 一方でこれと並行しながら、同族中小企業の企業価値評価の研究を進め、平成29年6月に日本財務管理学会春季全国大会の統一論題報告において「同族中小企業の企業価値」として報告した。この成果は、平成30年5月刊行予定の「年報財務管理研究」(第29号)に掲載される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は文献レビューを通して理論的枠組みの構築を進める一方で、中小企業基盤整備機構や日本政策金融公庫の方々と意見交換を行って実態把握に注力してきた。加えて、それらの成果の一部を公表する形で「日本財務管理学会」の統一論題報告で研究報告を行い、その内容を論文とした(「年報財務管理研究」第29号、平成30年5月刊行予定)。 このように、限られたエフォートの中で実績を残してきたが、本研究の到達点である、経営の移転と企業業績をはじめとする様々な財務パフォーマンスとの関係性を明らかにすることについては十分に達成できたと考えていない。加えて、わが国中小企業の多くを占める同族企業の事業承継における財務管理機能の役割と課題を抽出し、企業を継続的に発展させるための要因と望ましい姿を明らかにすることを目的に掲げている以上、その達成度としては満足いくものでない。 今回、補助事業期間延長を申請し、承認いただいているので、平成30年度については残された課題の遂行に努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度から研究計画として掲げている理論的枠組みの構築と仮説設定を、引き続き行っていく。また、その検証を目的とした実地調査を行う。加えて、小規模同族企業や事業承継によって経営権と実務執行が移転された企業、または移転を予定している企業に対しても、これまで以上に積極的にインタビュー調査を行っていく。 平成30年度は、補助事業期間延長を承認いただいた年度であることに鑑み、より効率性を重視した研究方法の模索に心がけていきたい。当初は、定量分析の実施に向けた変数の定義と分析方法の絞り込みを行うことも視野に入れていたが、残り1年は定性的情報の収集に努める予定である。そのためのインタビュー先の確保として、これまで以上に、中小企業関連団体との関係を密にし、研究対象企業の確保に努めていく。一方で、研究が進んでいるアメリカの研究者との意見交換を行うことで、新しい研究の方向性、分析視角を取り入れていこうとする姿勢は継続し、そのための海外出張を計画している。
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Causes of Carryover |
(理由)突然の学内業務の増加にともない、予定していた研究活動へのエフォートが十分に確保できず、国内でのヒアリング、インタビュー調査などが十分に行えなかったため、主に予算計上していた旅費に次年度繰越が生じた。 (使用計画) 平成30年度に実施するインタビュー調査の内容とそれにともなう訪問先などを早急に決定し、効果的な国内出張を計画することで適切に旅費を使用する予定である。
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